不動産の五輪特需もいまや息切れ状態に
大手メディアはあまり報道しないが、五輪特需はもう終焉の気配を見せている。
2019年上半期の首都圏マンションの発売戸数は、1万3436戸で前年比13%減。バブル崩壊以来27年ぶりの低水準になった。さらに、マンションの契約率も右肩下がりで、販売月に売れた割合は66.5%と低迷している。
不動産業者は、「新築マンションは、いま、在庫が山積みになっている」と嘆くようになった。
新築マンションの売れ行きがここにきて落ち込んだのは、価格高騰が原因と言われている。元をただせば、五輪特需による建築ラッシュで、建築資材の高騰が原因だ。
この建築資材の高騰ももう終わった。
建築用資材として代表的なH形鋼の価格が2%下落したのに続き、主要な資材である山形鋼、みぞ形鋼なども次々に下落し始めたからだ。
となると、今後は、マンション価格もじょじょに下落に転じていくだろう。株価低迷、円高、不動産下落と、今後、日本経済は3重苦に襲われる可能性が高くなってきている。
それでも日本経済は東京五輪まで持つ
では、最後に、私見を述べるが、ここまで書いてきたように、日本経済がさらに落ち込むのは間違いない。ただし、それでも、まだ、来年の五輪までは株価も不動産もなんとか持ち、円高も進まないと、私は思っている。
なぜなら、経済は極めて心理的なものだからだ。
はっきり言って、大手メディアは、五輪までは日本経済が低迷しようと、大きくは報道しない。そんなことより、五輪ムードを盛り上げていく。東証株価も、いまや官制相場だから、政府は下落時には資金をつぎ込む。NYが高値圏を維持していれば、そのコピー相場を続けるはずだ。
また、円は経済状況から見て、これ以上の円高にはならない。本来ならもっと円安になるはずなのに、そうならないのは量的緩和がいまも続いているからだ。今後、日米金利差が縮まり、日銀に打つ手がなかろうと、それだけでは円高にはならない。
円はまだまだだぶついているからだ。
さらに、「円は安全資産」という間違った言説が、これまでいくら流されても、円高はある程度で収束してきた。つまり、誰もそんなことは信用していないのである。よって、1ドル100円割れはないだろう。
さらに、いくら日本経済が低迷しようと、中国はもっと低迷する。トランプによって、中国は未来を奪われようとしている。
となると、その恩恵を日本が受けないはずがない。
したがって、中国依存からの脱却が進めば、日本経済はそこまでは落ち込まないと思う。国際的なサプライチェーンの変更を日本企業がうまく乗り切れば、その先は、アメリカによるパクスアメリカーナ経済圏のなかで生きる道が開かれる。
日本経済の正念場が訪れるのは、やはり東京五輪後である。少子高齢化と人口減により、どの道、日本経済が成長することはあり得ない。現状維持が続けば、それで十分としなければならない。
(了)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。
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