連載257 山田順の「週刊:未来地図」 「気候行動サミット」で盛り上がる国連 (中) 地球温暖化より深刻な「プラごみ」の行方は?

「地球温暖化は中国の作り話」と言ったトランプ

 トランプは地球温暖化を認めていない。アメリカ政府が2018年11月にまとめた「気候変動報告書」(温暖化対策をとらなければアメリカ経済は大混乱に陥ると指摘)ですら、「そんなものは信じない」と述べている。
 トランプにとって、温暖化は「単なる気候の一つ」にすぎず、それを主張する学者や環境運動家は、政治的な運動をしているだけと思っている。大統領になる前、ツイッターで「温暖化は中国の作り話」と述べたことがある。
 たしかに、アメリカがその対策として温室効果ガスの排出量を厳しく規制すれば、その分、製造業のコストが高くなり、規制が緩い中国がトクするだけである。中国は、今回の「気候行動サミット」でも、温暖化対策への強い意思を表明したものの、実際には途上国に石炭火力発電を輸出している。
 じつは、私も地球温暖化には懐疑的である。温暖化しているのは事実だろうが、その原因が、すべて温室効果ガスによるものとは考えられない。なぜなら、地球は人類登場以前から、寒冷化と温暖化を繰り返してきたからだ。
 それに、温暖化してなにがいけないのだろうか?海面が上昇し、香港やバンコクでは人が住めなくなると警告されているが、気温が2度上がっただけでそんなことが起こるだろうか?
 「パリ協定」というのは、世界の平均気温を産業革命前に比べて、2度未満に抑えようというものだが、それが温室効果ガスの削減だけでできるかどうか大いに疑問だ。

「地球にやさしい」は“環境教”という宗教
 
 あまり語られないことだが、多くの環境運動は、じつは、そのことによって得をする企業や団体によって資金援助されている。
 そして、それを知らずに共鳴する一般市民や若者、学生たちによって支えられている。しかも、環境ビジネスというのは、国家の税金を食い物にしているという側面もある。
 こうしたことを考えると、地球温暖化は科学ではなく“環境教”という一種の宗教ではないかと思うことがある。地球温暖化ばかりではない。「地球にやさしい」というスローガンで行われている環境運動の多くが、宗教運動がかっている。
 かつて、「反割り箸」運動というのがあって、木製の割り箸ではないプラスチック製などの「マイ箸」がブームになったことがあった。割り箸を使うと、森林が伐採されて、環境が破壊される。だから、割り箸を使ってはいけないとされた。
 しかし、割り箸というのは間伐材(森林の密度を調節するために間引かれた木材)や、木材加工時に捨てられる端材などを使ってつくられている。つまり、廃物資源を無駄なく有効に利用しているので、環境にとって悪いものではなかった。しかも、日本の森林は適度に間引きをしないと、健全な姿が守れない。
 ところが、こうした見方は環境運動の声にかき消され、国内の割り箸は安い中国製の割り箸によって駆逐されてしまった。その結果、里山の間伐が滞り、日本の森林、里山は荒れてしまったのである。
 このようなことがあったから、私は環境運動には懐疑的なのである。

温暖化と同時に寒冷化も進行している

 とはいえ、現在、地球が温暖化しているのは確かだろう。
 気象庁のデータでも、近年、猛暑日(日中気温が35℃を超える日)が激増している。私が子供の頃(50年以上前だが)は、そんな気温が高い日は夏に1、2日しかなかった。それが今年は、7月から現在まで、東京でも大阪でも15日を超えている。
 これは世界各国でも同じで、今年の夏のニューヨークも異常高温日が何日もあった。ロンドンやパリも同じだ。今回の気候行動サミットでも、今年の7月が、世界の平均気温が観測史上最も暑い7月になったことが報告されている。
 ただし、冬には逆の現象が起こっている。
 過ぎたことは忘れがちだが、それでも2年前、2017年の冬に欧州を襲った記録的な寒波を覚えている人は多いと思う。イタリアでは全土で雪が降り、1月7日からの2日間で7人が死亡した。なんと、南のシチリア島でも雪が降った。ドイツも大雪で、車の中で凍死している難民が発見されてニュースになった。ポーランドでは10人、チェコでは3人が死亡した。
 欧州の寒波は2017年だけではない。2014年の寒波もひどく、このときもまた記録的大寒波と報道され、ノルウェーでは魚が群れごと瞬間凍結していたことが話題になった。
 欧州ばかりではない。北米を襲う寒波も年々、ひどくなっている。2015年2月には、ナイアガラの滝がほぼ凍結してしまったことを覚えている人もいると思う。
 このように見てくると、地球温暖化は確かだが、地球寒冷化も確かではないだろうか。つまり、現在の地球は気候変動期に入り、年々その変動の幅が大きくなっているのだ。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。
2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。
主な著書に「TBSザ・検証」(1996)「出版大崩壊」(2011)「資産フライト」(2011)「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)など。翻訳書に「ロシアンゴッドファーザー」(1991)。近著に、「円安亡国」(2015 文春新書)。

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