内部告発者の「元祖」セルピコ元警官 代償大きく、「裏切り者」と呼ぶ元同僚も

 トランプ大統領の「ウクライナ疑惑」発覚のきっかけは情報機関の職員による内部告発だった。
 1970年代初頭、ニューヨーク市警察(NYPD)の腐敗を白日のもとに晒した内部告発者の「元祖」、フランク・セルピコ元警官(83)は今も健在でアップステートの人里離れた森の中で暮らしている。ニューヨークタイムズが4日、報じた。
 「私のときと似ているな。相手はこちらの信用を失墜させようと躍起になる。それを大統領がやっている」と元警官は話す。
 民主党が主導する下院の弾劾調査に、共和党が多数派の上院が冷ややかな対応を見せていることについて、「保身に汲々としている。正義を守れないようでは、国として人として存在価値はあるのか」と問いかける。
ブルックリン区生まれ。59年にNYPDに入隊した。賄賂などが横行しているのを見て、67年からNYPD本部や市長に苦情を申し立て始めた。しかし黙殺されたため、同紙の記者に情報を提供。トップ記事となり、NYPD史上最大規模の「腐敗粛清」の引き金となった。73年に「セルピコ」の題名で映画化された際には、アル・パチーノが元警官を演じた。
 一躍有名になった元警官だったが代償も大きかった。71年に麻薬事件の捜査中に顔面に銃弾を受け辞職した。内部告発を根に持たれ、援護がなかったからだ。傷は今も残り、元同僚の中には「裏切り者」とののしる者もいるという。