ニューヨーク市ホームレスサービス局(DHS)は約2年前から、ホームレスを他州へ移住させている。その実態をニューヨークポストが26日、報じた。
DHSが2017年8月から開始した「スペシャル・ワンタイム・アシスタンス・プログラム(SOTA)」では、市のホームレスシェルターに90日間以上滞在し、世帯収入が家賃の2倍以下の家族や個人を対象に、他州へ移住するための費用や1年分の家賃を支給している。全米32州の他、国外はプエルトリコまで、市内のホームレスがこれまでに移住したのは全373都市に上る。
既に5074世帯、合計1万2482人が同プログラムを利用しているが、受け入れ先には何も知らされていないという。また同紙が取得したDHSの記録から、市の税収から8900万ドル(約97億円)が、SOTAを利用し他州で暮らす家族の家賃に充てられていること、またDHSが管轄する別のプログラムの資金からも、移住のための交通費や家具購入の費用が支給されていることが明らかになった。
DHSは、ホームレス1家族が市のシェルターで暮らす場合、年間で4万1000ドル(447万円)の経費がかかるが、SOTAを利用する家族の家賃は平均で1万7563ドル(191万円)だとし、経費削減になると主張している。
一方で、同プログラムを利用し他州へ移住した224世帯が1年後、ホームレスとなって市のシェルターに戻っている。中には「水や電気、ガスもない粗悪な住宅に置き去りにされた」と市を訴える者もいるという。