ニューヨーク州で9年前に導入された人身売買調停裁判所(HTIC)が、売春する女性の支援に実際に役立っているかについて、懐疑的な声が上がっている。ニューヨークタイムズが6日、報じた。
2000年代初め、クイーンズ区刑事裁判所のフェルナンド・M・カマチョ判事は、売春して逮捕された女性は売春罪の記録が残り、釈放後も売春以外の職を見つけるのが困難になるとの「悪循環」に陥る傾向が高いことを発見。女性たちは自主的に売春をしているのではなく、被害者であると考え、売春容疑で逮捕された被告に対する訴えを却下し、記録を封印。再び売春させないためのカウンセリングを受けさせる12のHTICをニューヨーク州に開設した。
当初は司法専門家から「革新的」と評価されたHTICだが、売春婦たちからの評価はいまひとつだ。処罰を免れられることは歓迎するとしながらも、「カウンセリングは善意ある他人との非生産的な会話でしかない」「なぜ売春に至ったかを考えていない」などと、否定的な声も増加しているという。
HTICと連携してカウンセリングに当たっていた団体の中には、「裁判所のシステムから外れた方が信頼関係を築きやすい」として脱退した例もある。
一方で、ワシントン州シアトル市やジョージア州アトランタ市、ニューメキシコ州サンタフェ市は、HTICと同様の制度を導入。全米で5都市以上が導入を検討しているという。