メット美術館の「陵辱されるタマル」 大作の痛々しい来歴



 メトロポリタン美術館の634番ギャラリーには17世紀の画家、ウスターシュ・ル・シュールによる大作「陵辱されるタマル」がある。旧約聖書の題材だが、痛々しい来歴もあるようだ。ニューヨークタイムズが8日、報じた。
 同美術館は1984年、この作品を3人のディーラーから買い入れた。3人は83年12月、ロンドンのクリスティーズで現在の価格にして10万8000ポンドで落札。出品したのはドイツ人事業家、オスカー・ゾマーさんだ。ところが、ゾマーさんは1933年、ナチスドイツの迫害から逃れるユダヤ人美術商、シーグフリード・アラムさんからドイツ・ハイルブロン市の邸宅をただ同然の価格で購入。アラムさんは戦後、この作品を含む美術品をゾマーさんに略奪されたと、複数の法廷で主張していたことが最近判明した。アラムさんは競売の数年前に亡くなっている。同美術館は購入時、「競売前の来歴は不明」と結論付けていたが、声明で「早速、調査を開始する」とコメント。
 作品は現在、約150万ドル(約1億6500万円)の価値があると見られている。

The Rape of Tamar
By Eustache Le Sueur (www.metmuseum.org/Collections/search-the-collections/110001302?rpp=20&pg=1&gallerynos=620&ft=*&pos=7#fullscreen)