連載320 山田順の「週刊:未来地図」東京五輪絶望、感染拡大、不況突入…(第一部・完)新型コロナウイルスから命とお金を守るには?

参考になるWHOが発表したデータ

 長々と書いてきたので、今回はここまでとし、第一部の結びを書いておきたい。
 現在、私は67歳、分類上の高齢者である。そんな私から見ると、2月29日、WHOが発表したデータはどんな専門家の見解より参考になる。
 このデータは、WHOの中国派遣チームが中国の保健当局の専門家と共同で行なった調査(Report of the WHO-China Joint Mission on Coronavirus
Disease 2019)に基づくもので、2月20日までに中国で感染が確認された5万5924人の症例分析である。
 まず、症例に基づく典型的な徴候と症状は、次のとおりだ。
 発熱(87.9%)、乾いた咳(67.7%)、疲労(38.1%)、痰が出る(33.4%)、息切れ(18.6%)、のどの痛み(13.9%)、頭痛(13.6%)、筋肉痛または関節痛(14.8%)、悪寒(11.4%)、悪心または嘔吐(5.0%)、鼻づまり(4.8%)、下痢(3.7%)、喀血(0.9%)、結膜充血(0.8%)。
 つまり、こうした症状があったら、新型コロナウイルス感染を疑えということだ。
 次は致死率だが、5万5924の検査室確認患者のうち2114人が死亡しているので、致死率は3.78%である。これは、かなり高い数字だ。ただし、武漢では5.8%と高いが、中国の他の地域では 0.7%と低い。よって、感染発源地には近づいてはいけないということになる。
 そして、注目は年齢別の致死率だが、これは、年齢が上がるとともに高くなる。10代、20代では0.2%だが、50代を超えると数%となり、80代になると致死率は21.9%となり、感染者の5人に1人が死んでいることになる。私は60歳代後半なので、感染すれば、かなり危ないといえる。

 致死率を高めているのは、年齢とともに持病を持っているかいないかだ。とくに、合併症の患者は致死率が高い。その分類は、循環器系の疾患13.2%、糖尿病9.2%、高血圧8.4%、慢性の呼吸器病気8.0%、がん7.6%である。

この2週間、ほとんど外出せず

 私の妻は9年前にステージ3の直腸がんの手術をしている。私は3年前に後腹膜線維症という難病で、尿管狭窄から水腎症になり、尿管剥離手術を受けた。2人とも、免疫力は年齢よりは低い。
 となるとやはり、感染は怖い。元気な若者のなかには「感染しても平気」と豪語する者もいるが、そうはいかない。

 それで、この2週間ほとんど外出していない。緊急の仕事もなく、原稿や出演の依頼もめっきり減り、出かける用事があまりないこともあるが、やはり、出かけることにためらいがある。
 ともかく外出は近所だけにし、食材を買い込んでは料理をし、これまで読めなかった歴史書を読んでいる。それ以外は、ネットで世界中の気になるサイトを検索し、テレビでワイドショーや国内外の報道番組を見ている。
 ただ、今日(3月2日)は、パスポートが4月で切れるので、切り替えの申請に神奈川県パスポートセンター(山下公園前の貿易センター)に出かけた。雨だったせいか、横浜港には寂寥感が漂い、パスポートセンターには数人しか人がいなかった。いつもとはまったく違うこの光景に私は戸惑った。はたして、新型コロナウイルスパニックはいつまで続くのだろうか。(了、第二部に続く)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

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