今週もまた、新型コロナウイルスに関して書くことになった。いまや、このこと以外のなにを書いても虚しいからだ。一刻も早く、この世界的危機から脱出できなければ、私たちの暮らしはどうなるかわからない。
そこで、今回は、感染収束後の世界がどうなるか? それを展望してみたいと思う。
経済予測よりもJHK大学のレポート
いまはっきりしていることは、新型コロナウイルス感染症に対しては、有効なクスリもワクチンもないことだ。よって、世界中で研究・開発が進んでいるが、それがいつできるかによって、今後の世界がどうなるかが決まるということだろう。
もし開発が遅れれば、ウイルスの感染拡大は長期戦になる。長期戦にならない可能性があるとしたら、それは人類のほとんどが感染して抗体を持つようになるか、あるいは、ウイルスが自然消滅してくれるしかない。
私は、今回のことが起こってからジョンズホプキンズ大学(JHK)の「健康安全センター」(Center for Health Security)のホームページにアクセスし、そこにあるデータを必死で読んできた。
www.centerforhealthsecurity.org/resources/COVID-19/
このHPには登録欄があり、登録すると最新情報が毎日メールで送られてくる。だから、登録してメールもそのつどチェックしてきた。
コロナウイルスが引き金になって、経済危機、いやもはや恐慌と言っていいほどの危機にいま世界は陥っている。しかし、今後それがどうなるかは、どんな経済レポート、エコノミストの観測記事を読んでも意味がない。とくに株価などは、もはや専門家や投資アドバイザーの話を聞くのは愚の骨頂である。そんなことをするなら、ジョンズホプキンズのレポートを読んだほうがましだ。
信頼できるのはNIAIDのファウチ所長ジョンズホプキンズのレポートと並んで参考にしたいのが、米国立保健院傘下の国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長の見解だ。
ファウチ所長は、過去にヒト免疫不全ウイルス(HIV)、SARS、MERS、エボラ出血熱などの感染症対策に主導的な手腕を発揮してきた人物で、アメリカで民間人が受けられる最高の栄誉である「大統領勲章」の受賞者だ。先日(3月13日)のトランプ大統領の記者会見で、何度もマイクに向かった小柄な老人といえば、誰でもわかるだろう。
ファウチ所長もう米メディアにでずっぱりで、これまで何度も同じような見解、警告を発してきた。
彼は、3月15日に出演したNBCテレビの「Meet The Press」では、見通しをこう述べた。
「発病の(増減)カーブがどうなるか力学関係を見るためには韓国と中国を見ればいい」「(収束に向かうのは)だいたい数週間から数カ月はかかるだろう」
また、質問者の「もし連邦政府が新型コロナ問題を自然災害として対処し、国民にお金を供与するなら、感染拡大のスピードを抑えるために、14日間の国の全土封鎖を呼びかけるか?」との質問には、こう答えた。
「私たちはでき得る最大のことをしたい。私たちは大いにやりすぎになるべきだと思う。やりすぎで批判されるほうがいい」
日本で信頼できる情報源はどこか?
つまり、アメリカの場合、「国家非常事態宣言」が解除されるには、あと数週間はかかる。悪くすると数カ月かかるので、7月、8月になるかもしれないということだ。ヨーロッパ各国も、これは同じだろう。
ファウチ所長は、CBSテレビの「Face The Nation」では、自ら行動を控えていることを表明している。「私はレストランに行かない」「私は旅行のために飛行機に乗らない」と明言した。
ところが、日本は感染者検査数を絞り、感染者数を抑え込んでいるので、危機感がない。首相は「(感染拡大の)瀬戸際にある」と言いながら、会食を続け、自由に行動している。トランプ大統領ですら、PCR検査を受けたというのに、首相をはじめ政府関係者は検査すら受けず、現場視察も行っていない。しかも、首相は先日の会見(15日)で、「(日本は)非常事態宣言をする状態にない」と言ってのけた。
これでは、政府の発表は信じられない。
日本で信頼が置ける見解と警告を発しているのは、テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」だけだ。ここに出演しているテレ朝記者の玉川徹氏の言論、そしてこの番組で一躍名をはせて、いまや各局からひっぱりダコになった岡田晴恵氏(白鴎大学教育学部特任教授、元国立感染症研究所ウイルス第三部研究員)が、日本の現状を憂えて、的確な見解を述べている。
ただ、玉川氏も岡田氏も、最近はややトーンダウンしている。当初の見解、警告が政府批判になり、それに対する圧力を気にしたのか、やや歯切れが悪い。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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