連載334 山田順の「週刊:未来地図」ゴールデンウィーク明けまでに、日本は「コロナ禍」で「焼け野原」になる! (下2)

国民を愚弄した首相の「一人くつろぎ」動画
 もはや、安倍首相にはなにも期待できない。そうはっきりとわかる出来事が起こった。それは、歌手で俳優の星野源がインスタグラムで公開した動画『うちで踊ろう』に、安倍首相がコラボ動画を投稿したことだ。
 なんと、このコラボ動画では、首相は自宅のソファーで愛犬を抱いたり、コーヒーを飲んだり、読書をしたり、リモコンを手にテレビを見ている。まさかの光景が繰り広げられている。
 なぜ、こんな動画をコラボしたのか?
 首相は、「友達と会えない。飲み会もできない。ただ、皆さんのこうした行動によって、多くの命が確実に救われています」というメッセージを添えたので、「自宅待機」を国民に要請したかったのだろう。自分もこうしていますからみなさんもしてくださいと言うわけだ。
 しかし、これは、あまりにも国民を愚弄した行為だ。自分を完全に棚に上げている。
「休業補償もなく、休業要請された人はこんなに心にゆとりのある時間が持てるでしょうか?」「くつろいでいる場合ではないだろう」「星野源を政治利用するな」「庶民をバカにするな」「貴族の言うことなど聞きたくない」などといった批判が殺到し、この首相動画が炎上した。しかし、13日午前の記者会見で、菅義偉官房長官は、こう言った。
「(SNS上では)過去最高の35万を超える『いいね』をいただくなど多くの反響がある」
 政府の認識は完全にズレている。
 英国では、ボリス・ジョンソン首相が集中治療室から生還して退院し、動画で関係者に感謝の意を表明したばかりである。この首相の「1人でくつろぎ」動画と「アベノマスク」は、安倍退陣の決定的な引き金を引くだろう。

さいたま市の保健所長の現場の真実発言
 ここまで、日本はPCR検査数を徹底的に絞って、確認感染者数を減らしてきた。これが、政策的に行われたのならいいが、単なる縦割り行政に現場が従っただけだから、情けないとしか言いようがない。
 それが、はっきりとわかったのが、4月10日に明るみになった、埼玉県の保健所長の会見コメントだ。共同電は次のように伝えた。
《新型コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査が、さいたま市では2カ月で171件にとどまったことについて、市の西田道弘保健所長は10日、記者団の取材に「病院があふれるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と明らかにした。
 さいたま市は2月に検査を開始し、今月9日までに171件。同市より人口、感染者ともに少ない千葉市は同日時点で4倍以上の700件を超えた。
 西田氏は軽症や無症状の患者で病床が埋まるのを懸念したと説明。「検査を広げるだけでは、必要がないのに入院せざるを得ない人を増やすことになる」と述べ、ホテルなど滞在先施設の確保が必要だと強調した。》

「誤解を招く表現」と本人に厳しく注意
 検査数をいくら絞ろうと、感染者数が増え、治療を必要とする感染者が増えれば、病院のベッド数は足りなくなり、医療は崩壊する。つまり、検査数を絞ることと医療崩壊は関連しない。
 ところが、厚労省は、検査には手間がかるので、まずそれを嫌い、さらに、「検査を増大させて実際の感染者数を確認することには意味がない」として、ハードルが高いガイドラインを策定した。また、国立感染症研究所などが、感染者の疫学上のデータを独占しようという意思も働いた。
 保健所は地方自治体の管轄だが、厚労省のガイドラインを守らされ、これまで検査希望患者を症状があるのに排除してきた、それが、緊急事態宣言が出る前までの日本の実態だった。
 だから、メディアが報道する感染者数は意味がなく、また、日本の感染者数を諸外国と比べることも意味がなかった。
 さいたま市の保健所長の現場からの正直な発言は、このことをはっきりさせたのである。上から「病床が満杯になるのを避けろ」という指示が出ていたと匂わせたのだ。
 しかし、この発言に慌てたさいたま市の清水勇人市長は、13日になって、記者団に対し「誤解を招く表現だった」と述べ、西田所長に厳しく注意したと言った。
 いったい、なにを注意したのだろうか? 
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

【読者のみなさまへ】本メルマガに対する問い合わせ、ご意見、ご要望は、私のメールアドレスまでお寄せください。 → junpay0801@gmail.com

タグ :  ,