連載399 山田順の「週刊:未来地図」「コロナ敗戦」に突き進む日本: このまま社会主義国家になって自滅するのか?(中)

怖くて現実を受け入れない“認知的不協和”

 しかし、経済が回らないからロックダウンをして感染防止をしなくていいかと言えば、そうではない。このまま感染拡大が続けば、結局、経済も回らなくなる。誰が、感染者が増えているなかで、リスクを冒して経済活動をするだろうか。
 こうして、ともかく、「検査、検査、検査」となった。検査数を増やして、陽性者を隔離するという政策を、世界の多くの国が取るようになった。
 ところが、日本は、これをやっていない。PCR検査、抗原検査、抗体検査、すべてをいまもなお抑制している。なぜこんなバカなことを続けているのか?
 諸説はあるが、結局のところ、検査数を増やせば感染者がいまの数倍、数十倍もいることが国民にバレてしまうからだろう。それが、怖いからとしか言いようがない。
 戦時中、大本営が、負け戦を認めず、常に日本が勝っているようにアナウンスをしていたことと同じだ。首相以下、政府の中枢部は、戦時中と同じく、現実を受け入れようとせず、「神頼み政治」を続けている。まさに村社会、臆病者の集まりだ。
 これは、心理学で言うところの“認知的不協和”ではなかろうか。ヒトは、自分で解決できない難問に直面すると、現実認識のほうを変えてしまい、それで不快感から逃れようとする。まさに、トランプ大統領はその典型である。
 思い出してほしい。彼は当初、「(コロナは)インフルエンザみたいなもの」「すぐ特効薬ができる」と言っていた。愚かすぎないだろうか。
 とはいえ、これを言うだけ、まだトランプはマシだ。大胆不敵で自己愛が強い。しかし、わが国の首相は単なる臆病で、官僚作成ペーパーを読むことしかできない。

観光業、飲食業はもう成り立たない

 感染拡大が続けば、経済は回らず、縮小していく。これはすでにはっきりした。にもかかわらず、日本政府は「Go Toトラベル」という愚策を実施し、感染拡大を加速させている。さらにこの先、飲食業を活性化させる「Go To イート」もやろうとしている。国民としては、本当にもう勘弁してほしいと言いたい。
 このままいくと、「Go Toトラベル」も「Go To イート」も、本来の目的とは反対の結果を招く(というかもう招いて破綻している)。両産業とも、徹底的に衰退してしまうだろう。どちらも、ヒトとヒトが接触する“接触産業”だから、「三密対策」「ソーシャルディスタンス」が必要である。となると、それが続く限り復活などありえない。
 すでに時代は、「ウィズコロナ時代」に突入してしまった。「マスク時代」と言い換えてもいい。この時代は、当分、終わらない。前記したように、ワクチンができても効果なしとなれば、半永久的に続く。
 となると、観光業や飲食業を支えるために経済刺激策をやる。税金を使うというのは、大いなる無駄だ。休業補償、家賃補償なども、衰退産業を生き長らえさせるだけで、経済全体に対するリスクをかえって大きくする。
「ウィズコロナ時代」に必要なのは、“接触産業”から“非接触産業”への転換で、そちらに税金を使わなければならない。
 政府がやるべきなのは、「ウィズコロナ時代」に適した産業の育成で、そうしながら、いま観光業や飲食業に従事している人々をシフトさせることだ。

利口な人間ほどいち早く事業をたたんでいる

 衰退する産業は、倒産する、廃業する、縮小するなど、成り行きにまかせることだ。いくらコロナが不可抗力の災害とはいえ、国が救ってはいけない。資本主義経済、市場経済において、市場原理に反することをすれば、必ず反動がくる。このことは、すでに前々回のメルマガで述べたので、これ以上は述べない。
 ただ、メディアでこんな見解を述べる専門家はいないので、あえて述べてみると、こうなる。
「飲食業、観光業のみなさん。一刻も早く撤退してください」「そのほう傷が少なくてすみますよ」
 こんなことを言えば、おそらく袋叩きにあうだろう。
 しかし、利口な人間は、もうそうしている。さっさと事業をたたんでいる。もし、会社であれば、無限責任ではないのだから、一刻も早くハコをたたんで、違うビジネスを目指したほうがいい。
 決断できないのは、飲食店の場合、多くの経営者が店を出すのに借金をしているからだろう。借金を毎月の売り上げから返済していく計画になっている。これだと、店をたためば売り上げがすっ飛び、借金を抱えたままになってしまう。で、逃げようにも逃げられず、なんとかコロナが収束するまで様子を見ようとなる。しかし、すでに半年がたった。もう様子を見ている場合ではない。それでは、無策の日本政府と同じになってしまう。
 これは、投資家が陥る罠、株の損切りができないのと同じことだ。
(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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