連載416 山田順の「週刊:未来地図」菅義偉・新首相が日本経済を地獄に導く(上)

 9月17日に臨時国会で首班指名が行われ、菅義偉氏が正式に日本の首相の座に就く。この新首相は「安倍政権を継承する」と言っているが、それで日本の経済衰退は止まるのだろうか?

 今回は、新首相で日本経済がどうなるかを考えてみる。結論は「絶望未来」だ。ただし、早急に解散総選挙が行なわれる可能性もあるのでどうなるのかはわからない。しかし、それでも「安倍継承」では、日本経済はさらに落ち込むだけで、出口なしになるだろう。

アベノミクスで韓国より貧しくなった

 今週は菅義偉・新首相の「ご祝儀」報道が続くだろう。(編集部注:このコラムの初出は9月15日)誰も頼みもしないのに、識者やジャーナリストのなかには「日本を救えるのは菅総理しかいない」などと言い出す人間まで出た。また、大手メディアは、安倍政権から引き続き、菅新政権を持ち上げ続けるに違いない。

 しかし、冷静に現実を見れば、この内閣は「亡国内閣」となる可能性が大だ。なぜなら、アベノミクスという経済政策を継承すれば、それは地獄への道になるからだ。

 相変わらず、大手メディアは安倍長期政権を評価し、アベノミクスはある程度成功したと言っている。しかし、それは「雰囲気報道」か、そう思い込みたい「思い込み報道」で、現実はまったく違う。日本のGDP成長率は、ここ10年ほどほぼ横ばい。よくて年率1%で、欧州2%、アメリカ3%、中国7%と比べると、まったく見劣りする。

 平均給与も下がり続け、IMFの統計では、1人あたりのGDPは世界26位まで転落、28位の韓国に抜かれるところまできてしまった。購買力平価による1人あたりのGDPでは、すでに日本と韓国はほぼ同じだから、来年には、日本人より韓国人のほうが豊かという、有史以来なかった“新時代”が訪れる。

 コロナ対応を見ても韓国のほうが上手くやっているから、これは確実な未来だ。

あの「WSJ」紙まで安倍首相を評価

 それでも、安倍晋三首相がよかった点はある。それは、アベノミクスの“アナウンス効果”が効き、海外で日本のいいイメージが広がったことだ。首相そのものも、これまでの日本の首相ではありえなかった存在感を持った。

 NY証券取引所(NYSE)まで行って、「バイ・マイ・アベノミクス」(Buy my Abenomics!)とまで言った日本の首相はいない。これは、映画『ウォールストリート』のパクリだったが、それゆえアメリカ人は好感を持った。

 だから、あの「ウォール・ストリート・ジャーナル」(WSJ)までが騙されてしまい、安倍辞任表明後に、『安倍晋三の遺産』(“Shinzo Abe’sLegacy” 8月31日)という記事を掲載した。

 その冒頭は、安倍辞任を「日本にとっての損失」と述べ、「安倍氏は改革の必要性を認識していたが、根強い反対を克服するのに苦労することが多かった。それでもその意図は正しかった」というものだった。

 ただし、記事内では、さすがに保守的経済紙ゆえ、アベノミクスの「3本の矢」については、「経済構造改革という3本目の矢は飛ばなかった」としていた。それでも、企業のガバナンスの改革を促し、タブー視されてきた移民受け入れを容認する施策に転じたことなどを評価している。さらに、トランプ大統領との良好な関係も評価していた。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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