本の好み異なる各地の図書館 人種、民族間での違い顕著

 ニューヨーク市民の40%は米国以外で産まれた移民のため、市内にある87の市立図書館には60カ国語以上の言語の本が所蔵されている。周辺に移民が多く住む街の図書館では、全米でベストセラーとなった流行作が必ずしも突出して人気があるわけではなく、それぞれの民族や文化、地域によって人気のある本も異なるようだ。

 例えば、自国で起こったスキャンダルや祖国を思い出させる内容の古典的な本、自国では輸出入が禁止のため読めない本がよく読まれている。ニューヨーク市公立図書館の外国語コーディネーター、ジェイソン・バウマン氏によると、フランス語を話すアフリカ系米国人が多い地区の図書館では「ハーレクイン・ロマンス」が人気があり、クイーンズ区フラッシングやチャイナタウンでは、台湾の恋愛小説シリーズ「ロマンティック・フラワー」が中国系の10代の少女らに人気なのだとか。また、ブルックリン区ブライトンビーチのロシア系の女性たちには、肉食ダイエットの本がよく読まれており、クイーンズ区ジャクソンハイツの本屋では、元パキスタン大統領だったムシャラフ大統領の自叙伝の売れ筋が好調、グリーンポイントのポーランド系コミュニティでは、ワレサ議長の妻による家庭内の暴露本がよく出ている。

 このように各地域や民族ごとに本の趣向が違っているが、昨今では全体的に移民の子どもたちの母国語離れも指摘される。また、近年は電子書籍の影響で、本が売れなくなってきているというのが実情だ。