連載420 山田順の「週刊:未来地図」菅新内閣でさらに衰退確実! 女性差別をやめない限り日本は復興しない(上)

 菅義偉・新内閣がスタートしてから1週間、いまだに“ご祝儀報道”が続いている。しかし、いくら「国民のために働く内閣」と言っても、閣僚の顔ぶれを見れば、期待感は吹き飛ぶ。老人だらけで女性はたった2人。この世界の国々と隔絶した政治体制で、どうやって“国難”を乗り切れるのだろうか?

 コロナ禍もあって、日本のガラパゴス化、斜陽化は進む。このまま女性差別を放置すれば、日本は誇れる国ではなくなってしまうだろう。

女性閣僚がたった2人の老人内閣

 「国民のために働く内閣」と菅首相が胸を張る政権の目玉構想は、「デジタル庁の新設」「携帯電話料金の値下げ」「不妊治療に保険適用」の3つ。この3つに関して、メディアは “ご祝儀”報道を繰り返している。

 しかし、どれもミクロの政策だ。日本が直面している最大の問題と言える「少子高齢化による国家衰退」に対しての処方箋たりえていない。なのに、メディアはそこを批判しない。

 ただ、一部のメディアだけが、「平均年齢の高さ」(老人ばかり)と「女性閣僚がたった2人」に対して懸念を表明している。

 71歳の菅首相を含めた閣僚の平均年齢は、60.38歳(2006年の第1次安倍政権発足時は60.9歳)。その内訳は、70代が3人、60代が8人、50代が9人、40代はゼロで、30代は小泉進次郎氏(39)のみ。最年長は麻生太郎氏(就任時79、いまは80)。女性閣僚は20人のうち上川陽子氏と橋本聖子氏の2人だけ。

 また、ほとんどの閣僚が安倍内閣からの再任、横滑りだから、これで日本がよくなる、アベノミクスの失速とコロナ禍による経済衰退から回復できるとはとても思えない。「適材適所」「安定した顔ぶれ」などと、いくらメディアに期待感をあおられても、冷静に見れば、疑問符だらけではないだろうか。

 ただ、こうしたことをズバリ言う新聞、テレビ、専門家、コメンテーターはいない。SNSでは「マジでただの老人内閣」「これじゃ世界から遅れるのは当たり前」「女性が輝く社会はやはり嘘だね」なんて声が多いのに、表に出てこない。

 そんななか、私が見た限りでは、フジテレビの『とくダネ』で、古市憲寿氏だけが「閣僚も党人事もおじいちゃんばっかりですよね。古い日本を象徴しているみたいで嫌なんですけど」と言っていた。彼は若いから、テレビ内にある“空気”に配慮しない。

韓国の文在寅政権よりはるかに劣る

 ここ何年かで、大手メディアと政権との馴れ合いが進んだ。官僚ばかりか、大手メディアもそこで仕事をするジャーナリスト、学者、評論家も、ほとんどが政権に「忖度」をするようになった。そのため、いま実際に起こっていること、数値データ、国民の率直な声は、メディア側が意識するかしないかは別として、無視されるようになってしまった。

 前回のメルマガで指摘したように、いまの日本は韓国よりも貧しくなろうとしている(購買力平価による1人あたりのGDPではすでに抜かれた)。なのに、こういう事実を前提にした言論は皆無だ。

 今回の菅内閣も、政治的なイデオロギー、政策は別として、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権よりも“ポンコツ”で、女性蔑視であるのは明白だ。

 文政権の閣僚18人のうち女性閣僚は6人で、その割合は33.3%。女性に関する国連の機関「UN Women」と「IPU」(Inter-Parliamentary Union:列国議会同盟)によれば、この割合は世界36位と比較的上位にランクインしている(2020年3月時点)。これに対して、日本は15.8%で、なんと世界113位である。この調査時点は、第4次安倍内閣で、女性閣僚は3人おり、今回の菅内閣の2人より1人多かった。

 なお、韓国の女性議員の割合は17.3%。クオータ法が制定された2000年には5.9%にすぎなかったが、20年間で約3倍になった。しかし、それでも世界121位だ。

 これに対して日本は、日本の女性国会議員比率(衆院)は10.2%で、193カ国中なんと165位。これはOECD加盟国36カ国中の最下位で、絶望的な低さである。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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