連載422 山田順の「週刊:未来地図」菅新内閣でさらに衰退確実! 女性差別をやめない限り日本は復興しない(下)

なぜ明らかな女性差別が続いているのか?

 日本は、民主的な実力社会(メリットクラシー)ではない。表向きはそのようになっているが、実際は、縁故、情実、義理などで社会が成立し、緩やかにつながっている。かつて『タテ社会の人間関係』(中根千枝)に描かれた日本は、いまも変わりなく存在している。

 もし、日本が本当に実力社会なら、男女同権が実現し、「男女雇用機会均等法」が施行されてから40年以上もたっているのに、女性の平均賃金が男性のそれよりも圧倒的に低いということはありえない。

 国税庁の「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」によると、給与所得者の平均年収は441万円だが、 女性の平均年収はそれより148万円も少ない293万円だ。

 なんで、こんなことが起こるのか?

 それは、多くの企業が女性に対して門戸を閉ざしているため、働きたい女性の多くが正規で採用されないからだ。また、正規社員になったとしても、職務で男性と区別されて給与を低く抑えられる。さらに、キャリアパスでも男性と同じには扱われない。

 それで、「それは明らかに女性差別ではないか」という批判が起こるが、その通りだとしても、こうした声を政府は受け付けない。そのため、いまも男女雇用機会均等法には罰則規定はないし、男女同権は “努力目標”扱いだ。

いくら働いても男性より低い給与所得

 日本の給与所得者数は4945万人。このうち、 女性の給与所得者は約2081万人だが、正社員は1077万人、非正規は813万人で、約39%が非正規で占められている。女性労働者の約4割がパートや派遣などで働いているというわけだ。

 また、正規社員であっても、結婚や妊娠で退職した後は、正規ではなく非正規でないとなかなか復帰できない。明らかに女性は差別されている。

 日本の女性の男性との給与格差は、先進諸国のなかでダントツに高い。同じ仕事をしても女性は男性の60〜70%しか給与が得られず、正社員であっても男性の75〜80%程度である。こんな状況だから、日本は女性の貧困率が高い。

 今回のコロナ禍の影響をもっとも受けたのが、そうした女性たちで、とくに働いて子供を育てているシングルマザーたちの生活が立ちいかなくなった。

「学校が休校になり、給食もなくなりました。私の仕事もなくなりました。このままでは飢え死にするほかありません」という母子が、緊急事態宣言が出たときに続出した。

蔡英文総統とメルケル首相の才女ぶり

 ここで、話を変えて、コロナ禍について考えてみると、コロナの封じ込めに成功した国は、不思議にもリーダーがみな女性で、女性が活躍できる社会ができていることに気がつく。

 すでに、この視点での報道があるが、以下、まとめてみたい。

 まず、なんと言っても、台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン、62)総統を挙げてみたい。今回、彼女は、世界のどの国よりも早く動き、いち早くマスクを確保、検査を徹底、情報をすべて開示して、感染拡大を防いだ。そのため、国民の圧倒的な信頼を得た。

 蔡英文総統は、台湾のトップ大学である国立台湾大学法学部を卒業後、1980年に米コーネル大学ロースクールで法学修士(MD)、1984年に英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学博士(Ph.D.)を修得している。まさに才女で、この経歴に匹敵する日本の政治家は1人もいない。

 ドイツメルケル首相(65)も才女だ。東ドイツ出身で、名門ライプツィヒ大学を卒業した物理学者。今回のコロナ禍では、国民向けに、「東西ドイツ統一以来、いや第2次世界大戦以来の試練だ」と述べ、都市封鎖の必要性を強く訴えて、こう決然と語りかけた。

「旅行や移動の自由を苦労して勝ち取った私のような者にとって、こうした制限は絶対に必要な場合にだけ正当化される」

 また、自らに2週間の自宅隔離を課し、国民の圧倒的な支持を得た。

 ドイツは男女同権がほぼ達成された社会である。世界経済フォーラム(WEF)が2019年12月に公表した「ジェンダーギャップ指数」において、世界153カ国中10位にランクインしている。ちなみに、日本は121位だ。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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