連載424 山田順の「週刊:未来地図」金融緩和の限界「コロナバブル」は必ず崩壊する(上)

 世界中がコロナ疲れで、社会全般が緩んできていく。どう見てもこの先、現在の株高によるコロナバブルは必ず崩壊するのに、緊張感、危機感がまったくない。

 しかし、ポストコロナの未来は、しばらくは荒涼たる原野のような世界になるだろう。失われた日常が戻るわけではあない。これまでと違う日常がやって来るのだ。

 いままでの資本主義、自由経済経済は続かない可能性さえある。なぜそうなるのか? 今回は、それを考える。

2023年末まで「適温相場」は続くのか?

 相変わらず、世界中で株高が続いている。株式市場に資金が流れ込み続けている。FRB(連邦準備理事会)は、9月16日の「FOMC」(連邦公開市場委員会)で、少なくとも2023年末までゼロ金利政策を維持する方針を表明。その結果、市場に緊張感がまったくなくなってしまった。

 証券会社、ヘッジファンド、投資家などの投資筋は、のんべんだらりと投資を続けている。なにしろFRBは物価上昇率が2%に到達するまで利上げをしない、非伝統的な金融政策=量的緩和を続けるというのだから、株価をはじめとする金融資産は下落しようがない。2023年末までは、「適温相場」(ゴルディロックス相場:Goldilocks Market)が続いていくだろう。

 しかし、市場参加者は、誰もが「これはおかしい。そんなことがあるだろうか」と考えている。なぜなら、ここまでの異常かつ大規模な緩和は史上なかったことだからだ。誰もがわかっているのは、現在の相場が実体経済と乖離していること。世界中の中央銀行が刷り続けたマネーが金融市場に流れ込んでいるだけだということ。だから、それが終われば、確実にバブルは崩壊する。株価は間違いなく暴落する。

 それが、本当にFRBがゼロ金利を解除する2023年以降になるのか?この点だけが最大の懸念である。2023年いっぱいといえば、いまから2年以上もある。そんなにも長く、この適温相場が続くのだろうか?

世界中でヘリコプター

マネーが降っている

 FRBは、いま、ほぼ無制限に債券の購入を行なっている。コロナ禍でレーティングが投資適格から投機的水準になった「堕天使債」(フォーリン・エンジェル:Fallen Angel)まで買っている。さらに、中央銀行がやってはいけない一般企業への間接融資にまで踏み込んでいる。これは、民間企業の債務を事実上保証する「禁じ手」である。ここまでいくと、資本主義は変質し、自由主義市場経済ではなくなってしまう。

 FRBと同じく日銀も、「上場投資信託」(ETF)から「不動産投資信託」(J-REIT)、民間の会社の社債まで買っている。そのうえ大量の国債を引き受けているから、円は刷られるだけ刷られている。そして世界中で、中央銀行がFRBや日銀と同じことを行なっている。

 現在までの先進国の金融緩和の総量は、約6兆ドル(1ドル105円として630兆円)とされている。これは、2008年のリーマンショック時の2倍超である。

 もしコロナ禍がなかったら、こんな政策はありえなかった。なにしろ、中央銀行が刷ったマネーを無制限に市場に供給し、政府は国民や企業にそれを配っているのだ。

 量的緩和とは、いわゆるヘリコプターマネーのことで、空からおカネが降ってくるのだから、市場参加者にとっては天国だ。どんなに失敗しようと、どんなに景気が悪くなろうと、中央銀行が損出を補填してくれるのだから、笑いが止まらない。しかし、おカネが降ってこなくなったらどうなるのか?

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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