連載430 山田順の「週刊:未来地図」アメリカの圧力で崩壊する「中国製造2025」 とばっちりを受ける日本(完)

出荷停止で年間約1兆円が失われる

 韓国の「中央日報」が報じたところによれば、最近の中国メディアでは“チャーボーズー”という言葉がよく使われているという。「両手で首を絞める」という意味で、アメリカの技術制裁によって中国は首を締め上げられているという。

  中国の韓正副首相は、月14〜15日に武漢の半導体生産団地を視察し、「中国企業は『首を締める』技術を開発しなければならない」と話したという。それに併せて、「中国科技日報」は、チャーボーズーのリストを25項目に整理して公開した。

 そのうちの最初の二つは、半導体技術である。一つは半導体製造の工程の「リソグラフィー」。これは、シリコンウエハーの上に回路パターンを刻む技術で、中国はそのほとんどを輸入に依存している。もう一つは、微細技術で中国のファウンドリーはSMICだけが14ナノメートルが可能だが、台湾のTMSCと韓国のサムスン電子は、すでに7ナノメートルで生産している。

 今後、中国の製造業に装置や技術を売っている日本企業は、米中戦争の激化とともに、そのとばっちりを多大に受けるだろう。キオクシアのような事態は、この先も起こる可能性がある。

 今後の焦点は、アメリカ商務省への申請が認められるかどうかである。認められるかもしれないという声もあるが、ほぼ認められないはずだ。申請制にしたということは、申請しても許可しないということ同義だからだ。

 半導体や電子部品を中心とした日本企業のファーウェイの出荷額は、年間約1兆円に上るという。今後は、これがすべて失われる。これは、ものすごいダメージである。

 それにしても、日本政府は米中の間で腰が定まらない。中国切り離しの明確な方針を打ち出していない。これでは、本当に先が思いやられる。中国のキャッチアップ力は侮れない。もたもたしていると、日本はすべて失ってしまうかもしれない。

(了)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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