連載431 山田順の「週刊:未来地図」世界ランキングで下落を続ける日本の「いま」(上)

 コロナ禍のなかでも、世界の国々は互いに競争しあい、グローバル経済のなかでどうやって豊かになるかを追求し続けています。国家の繁栄は、国民1人ひとりの力の総合である「国力」にかかっている。

 ところが、日本の国力は、なんとこの30年間、落ち続けているのだ。私たちはいま、「失われた30年」を生きている。なぜ、こんなことになったのか?ここで、改めて、世界のなかでの日本の位置を確認し、未来を切り開くべきだ。

世界第2位から30年で第26位に転落

 この30年間で、日本の世界ランキングの低下がもっとも深刻なのは、「1人あたりのGDP」だろう。日本はGDPなら、いまだに世界第3位だが、これは経済の規模を表すだけ。GDPがいくら大きかろうと、国民が豊かとは限らない。そこで、1人あたりのGDPという指標が重要視されるわけだが、そのランキングの落ち方が普通ではない。

 日本の1人あたりのGDPは、1988年には世界第2位だった。それが、2018年は第26位にまで下落。韓国が第28位で、日本をすぐにでも抜くところに来ている。

 次が、1人あたりのGDPのトップ10の国と、トップ30に入っている主要国である。

 

世界の1人当たりの 名目GDP(USドル) ランキング

 このランキングを見て言えるのは、トップ10では、アメリカを除いてみな、利益を上げられる産業に特化した国か、資源に恵まれた国だということ。また、先進国とされる国々では、ドイツが18位、フランスが21位、イギリスが22位と、みな日本よりやや上に位置していることだろう。

 この2つのことを踏まえて見ると、日本の26位、約3万9303ドルという位置は、先進国と言われる欧州諸国とはまだ1万ドル以上差が開いていないので、それほど悲観することではないということになる。(ちなみに中国は70位で約9580ドル)実際、そういう意見も聞かれる。

 しかし、それはとんでもない間違いではないだろうか。というのは、GDP成長率では、この30年間、日本はよくて1〜2%でほとんど成長していないからだ。これに対して、アメリカも欧州諸国も少なくとも3%は成長し、アジアの新興国にいたっては、2000年代に入ってからは軒並み5%を超えて成長している。中国の成長率は10年前までは10%を超えていた。

 つまり、日本がこのまま「長期停滞」を続ければ、あと10年もすれば50位以下に落ちてしまうかもしれないのだ。落ちるというより、ほかの国にどんどん追い抜かれて、そうなってしまう可能性が高いのだ。

 そう思うと、勤勉な国民性から、毎日一生懸命働いていて暮らしていることが、切なくなってくる。資源も食料も少ないこの国は、国民が頑張って働かなければやっていけない。日本は“ワーカー国家”である。  

 よく言われるが、日本の大問題は、韓国よりも劣る「労働生産性の低さ」だ。先進国のなかで、日本ほど生産性の低い国はない。私たちは、もっと上手に効率よく働かなければならない。

(つづく)

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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