給与でOECD諸国の平均以下に転落
かつて私は『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(SB新書、2014)という本を書き、日本の国際的地位が低下していることを嘆いた。このとき、国際機関が発表するランキングのデータを数多く使ったが、いま、それを最新のものと比べてみると、日本のランキング下落が止まらないことを改めて思い知る。日本は、ここまで落ちているのかと、ため息が出る。
前記したように、日本は、勤勉に働く“ワーカー国家”である。しかし、このワーカーの給料がまったく増えない。増えないばかりか、下落している。その結果、世界の国々に大きく水を開けられ、ランキングも下落の一途をたどっている。1980年代の後半、日本人の平均給与(年収)は世界一だった。それが、いまやOECD加盟国の下位グループにまで落ちてしまっている。
次に示すように、日本人の平均給与は、購買力平価(PPP)によるランキング(2018年)で、19位4万573ドルである。アメリカの4位6万3093ドル、ドイツの11位4万9813ドル、イギリスの14位4万4770ドルなどに比べると、かなりの差がある。しかも、OECD35カ国(2018年当時、2020年現在では加盟国は37カ国)の平均4万6686ドルを下回っているのだ。
G7国では、日本より下にいるのはイタリアの22位3万7752ドルだけである。
19位といっても、約4万ドル(1ドル105円換算で約425万円)あるのだからいいのではないかという見方もあるだろう。しかし、問題は、金額の多寡よりも、長期にわたって金額が増えず、その結果、ランキングの順位が年々落ちていることだ。
2000年から2018年までの各国の平均給与の推移を比較してみると、日本は106ドル増加している。ところが、アメリカは9189ドル、ドイツは6497ドル、イギリスは5862ドルも増加している。韓国にいたっては1万390ドルも増加し、日本に並ぶところまで来ている。それなのに、日本はたったの106ドルしか増えていない。
OECD35カ国(2018年当時)のうち、金額が減少したのはギリシャ、イスラエル、ポルトガルの3カ国だけ。つまり、32カ国が増加したわけだが、その増加額もっとも低かったのが日本なのである。
年々低下する世界競争力ランキング
コロナ禍の最中、2020年6月に、毎年恒例のスイスのビジネススクール「IMD」(International Institute for Management Development)による「世界競争力ランキング」 が発表された。
いろいろの見方はあるが、このランキングも重要で、ランキング上位なら、今後の発展が期待できる。逆に下位なら、期待は持てない。
次に、最新の順位を示すが、日本は34位。2019年は30位だったので、4ランク後退している。
このランキングは、経済状況、政府の効率性、ビジネスの効率性、インフラ整備などの項目の比較と国際機関のデータ、経営者へのアンケートを基にしている。今回の調査対象国・地域は63カ国だから、日本は中位に位置しているが、問題は下落が止まらないことだ。
このランキングが始まった1989年、日本は1位にランクされた。しかし、1990年代後半から順位を落とし始め、2003年には27位まで低下。一時、わずかに上昇したことがあったが、その後はつるべ落としに順位を下げてきた。
主要国と言われる国のなかで、日本ほど激しく順位を落としてきた国はない。しかも、日本はアジア諸国にも差をつけられている。1位のシンガポールは別格としても、日本より上には、5位に香港、11位に台湾、20位に中国、23位に韓国、27位にマレーシア、29位にタイがいる。
もはや日本はアジアにおいてもリーディング国家ではなくなり、完全な斜陽国家に転落してしまった。
(つづく)
【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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