ニューヨーク州教育省はこのほど、公立小学校の3〜5年生を対象にした国語の授業カリキュラムに、戦争、爆撃、誘拐などを鮮明に描いた挿絵や物語を含む本の使用を承認したが、教育関係者や保護者などの間では8歳の児童の学習に適切であるかどうかの議論が繰り広げられている。
例えば、2003年に米英軍がイラク侵攻した際の実話をもとに作られた「バスラの図書館員」という読み物では、戦闘機から中東の街に爆弾が投下される挿絵が掲載されている。このほかにも、マシンガンで市民を銃撃する兵士の挿絵や、アフガニスタンで兵士に誘拐された少年の話、女性が外を出歩くことを禁じたタリバン政権に関する議論も含む教科書もある。
クイーンズ区内にある小学校の校長は、「3年生のみならず、小学生の教科書として不適切な内容。銃や爆弾、戦争の話を(国語の授業に)持ち込む必要はない」と反対意見を述べた。
ニューヨーク大学(NYU)教育学部のスーザン・ニューマン教授もまた、「子ども達にとって戦争の内容は複雑過ぎて理解するのが難しいため、意義のある学習につながらない」と否定的だ。
だが一方、「若いうちからノンフィクションの本を読むことで、語学だけでなく歴史など+αで学ぶことができる」と肯定的な意見も聞かれる。
同カリキュラムは、米政府によって2014年までに全米の小中高校での導入を目指す「コモン・コア」と呼ばれる共通学力基準に沿うものとして、ニューヨーク市教育局も公に推奨している。
州と市当局の両者とも、新カリキュラムはあくまで“推奨”であり、最終的に授業で使用される書物の決定は各学校の校長に委任すると強調している。