連載510 山田順の「週刊:未来地図」世論調査は操作されているのか?  菅内閣の支持率が前月比で上昇した謎を解く(下)

連載510 山田順の「週刊:未来地図」世論調査は操作されているのか?  菅内閣の支持率が前月比で上昇した謎を解く(下)

 

コンピュータが電話番号をつくり出す

 では、ここでさらに、無作為による電話調査について検証してみよう。この方法は、「RDD」方式と呼ばれている。RDDとは「ランダム・デジット・ダイヤリング」(Random Digit Dialing)の略。コンピュータで無作為に出してきた電話番号に電話をして調査するという方式だ。

 コンピュータは、調査対象地域に偏りが出ないようにした乱数表により、数字を組み合わせて、電話番号をつくり出す。実際にある番号を探すのではなく、つくり出すのだ。よって、電話帳に番号が載っていない人間にも調査が行き届くこともある。

 電話調査は、機械による自動音声方式を使う場合もあるが、朝日新聞などの大手メディアのほとんどは自動音声方式を採用していない。  これが「RDD」の仕組みで、ここまでは問題はない。問題は、実際に電話をかけてからである。

 電話調査がかかってきた経験がある人ならわかるだろうが、この類の電話は「セールス電話」と同じで、「うざい」ものだ。とくに忙しいときなど、長々とした説明など聞いていられない。

 そこで、多くの人が断る。なかには、ガチャンと切ってしまう人もいる。私も、何度か経験があるが、ほとんど断ってきた。

「答えたい人」だけが調査に応じる

 コールセンターに派遣で行き、電話調査を行なっていた女性に話を聞いたことがあるが、彼女はこう言った。

「ほとんどの人が『すいません、お断りさせてくだい』と言って断ります。なんにも言わないでガチャンと切る人も多いですね。怒鳴りつけてくる人もいます。若い人は9割が断ります。答えてくれるのは、やはりヒマな高齢者の方とか、わけ(理由)ありの人です」 「わけありって?」 「政治オタクの人とか、支持政党を持っている人とか、活動家とか、ネトウヨとか」 「電話でそれがわかるんですか?」 「長くやっていると、なんとなくというか、それなりに話し方なんかで、この人はわけありとわかりますね」

 電話調査がほとんど断られるということは予想の範囲だが、断らない人は「わけあり」というのには、改めてそうなのかと思った。  となると、電話調査には大きな偏りが生じる。つまり、「答えたい人」だけが調査に応じているということだ。

聞き返すことで8~10ポイント上昇

 もう一つ、電話調査女性に教えられたことがある。それは、積極的ではないが、応対してくれた人間に、「どちらとも言えない」人間が多いことだ。

 「『支持しますか?支持しませんか?』と聞いて、『うーん、どちらとも—–』と言われると、その選択肢がないので、『どちらのほうがお気持ちに近いですか?』と聞き返します。そうすると、『支持かな』と答える人が多いんです」

 これが、菅内閣の支持率がいまも大きく落ちず、政権発足当初、高支持率を誇った原因ではなかろうか。

 政権発足当初、日経新聞と読売新聞の世論調査は、支持率が70%を超え、どちらも74%という高支持率を叩き出した。これは、朝日新聞の65%、毎日新聞の64%などより、8~10ポイントも高かった。

 日経新聞によると、最初の質問に「支持する」と回答した割合は66%で、回答があいまいな人に「どちらか?」と聞き返した結果、ポイントが上がったのだという。読売新聞も同様だという。

(つづく)

この続きは4月12日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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