連載529 山田順の「週刊:未来地図」マスクなしの日常生活はいつからできるのか? 高齢者優先のワクチン接種への疑問(中)

連載528 山田順の「週刊:未来地図」マスクなしの日常生活はいつからできるのか? 高齢者優先のワクチン接種への疑問(中)

ワクチン接種で感染者が激減したイギリス

 アメリカよりも接種が進んでいるのがイギリスだ。4月3日に、接種者(少なくとも1回接種した人)は3000万人を超えたので、現時点では全人口の50%に達しているだろう。2回目の接種を終えた人も10%を超えたとみられる。ちなみに、イギリスの人口は約6660万人。

 この結果、イギリスの死者数、感染者数は激減し、ピーク時に1日6万人を超えていた感染者数は1000人台まで落ちた。

 ジョンソン首相は安堵を表明し、1月から続く3度目のロックダウンの一部緩和に踏み出すと宣言した。以後、段階的に解除していくという。また、「私もパブに行ってビールを飲む」とも言い、暮らしの正常化に向けての自信を示した。
ただし、ワクチンはアストラゼネカのみ。アストラゼネカのワクチンは、最近、副反応が報告されているため、現在、子どもへの臨床試験を中断している。

 いずれにせよ、このままいけば、イギリスも夏を待たずに集団免疫が達成される可能性が強い。

 4月9日、イギリスの各スポーツ団体は、政府の「新型コロナウイルス陰性証明プログラム」を支持する声明を発表した。このプログラムは、一種のワクチンパスポート。ワクチンを接種して現時点で陰性の場合、あるいは過去6カ月間にコロナに感染し現在免疫ができている場合に、それを証明してくれるものだ。

 この証明書を持っていれば、6月21日から、ソーシャルディスタンスを取ることなく、スポーツイベント会場に入場できる。もちろん、会場の収容人数の制限も撤廃される。
 イベント帰りにパブに行き、飲み明かすこともできる。

 しかし、日本はどうだろうか? おそらく夏になっても、スポーツイベントは観客を制限し、飲食店の時短営業は続けられているだろう。しかも、マスク着用は絶対である。

世界の接種状況、成功国と遅れた国の違い

 新型コロナワクチンの接種は、現在、世界180を上回る国と地域で進んでいる。つまり、これは全人類を巻き込んだ壮大な社会実験と言え、遅かれ早かれ、世界中の人々がワクチン接種を受けることになる。

 ただ現在、接種のスピードは、国によって大きく違っている。先進諸国は早く、途上国は遅いというのが大方の状況だが、例外はある。それが悲しいかな、この日本だ。
 次は、英BBCの日本版サイトにある、ワクチン接種の進捗の地図。

https://foimg.com/00065/hbRaKr
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-56051716

 ここでは、接種の進捗状況を4段階に分けてカラーリングしている。(1)2021年末まで(2)2022年半ばまで(3)2022年末まで(4)2023年初めから—–の4つだが、(1)に米英、EUが入っているのに、日本は(2)の「2022年半ばまで」に分類されている。政府は今年いっぱいで、全国民の接種を終えると言っているが、世界はそうは見ていない。


 この地図の元になったのは、英「エコノミスト」誌の調査。英「エコノミスト」誌は、これまでワクチンの進捗状況と経済予測を包括的に調査してきた。それによると、ワクチン接種成功国(接種が進んでいる国)は、ワクチン製造能力、ワクチンを実際に接種するまでに必要な医療インフラ、および経済力を兼ね備えた国である。これに、人口規模が大きく影響する。


 この観点に立つと、成功国の先頭を走るのはアメリカ、イギリスであり、続いてEU諸国である。ただ、そんななかで特筆すべきなのが、イスラエル、UAE、セルビア、ブータンなどの小国が、意外にも大きく成功していることだ。

(つづく)

この続きは5月7日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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