連載543 山田順の「週刊:未来地図」「安価地獄」に陥った日本(2) デフレを放置したままだと先進国転落は確実(中)

連載543 山田順の「週刊:未来地図」「安価地獄」に陥った日本(2) デフレを放置したままだと先進国転落は確実(中)

中国の賃金事情はどうなっているのか?

 前回のコラムでは、中国の物価事情を日本と比較してみた。そうしてみると、日常品や庶民食はまだ日本の7~8割ほどだが、高級品や高級レストラン、高級ホテルとなると、すでに日本より高くなっている。

 たとえば、「ビッグマック指数」で使われるビッグマックの価格は、中国は3.46ドル(361円)、日本は3.74ドル(390円)で、中国のほうが日本よりやや安い程度だ。また、地下鉄の初乗りは3元(約50円)だから、これは圧倒的に中国のほうが安い。

 しかし、「ヴィトン」や「グッチ」「シャネル」などの高級ブランド品となると、いずれも日本よりも2、3割高めだ。また、不動産価格となると、北京や上海ではマンションで「億ション」はザラで、東京の価格をしのいでいる。

 そこで、気になるのが、中国の賃金、給料である。ファーウエイの初任給の例にあるように、こちらも、もう日本を追い抜いているのだろうか?  私の娘が中国に留学していたとき、いまから15年前の話だが、学生たちに聞いた中国企業の一般的な初任給は、約3000元(約5万円)だった。しかし、いま同じように聞くと、最低6000元(約10万円)という答が返ってくる。

中国大都市部の給料は日本と並んだ

 中国の人材サービス「BOSS直聘」が2020年に公表した「2021年卒業生の平均給与」に関するレポートによると、新卒月収の平均値は6812元(約11万5000円)、中央値は5922元(約10万200円)となっている。

 ただし、博士号習得者(主に院卒)となると、一気に跳ね上がり、平均値2万6523元(約44万8800円)となる。とくにIT人材となると、この額はさらに跳ね上がる。

 ファーウエイ日本法人の「新卒初任給40万円」を非難した日本のメディアが、いかに“井の中の蛙”か、わかるだろう。  中国の大都市では、すでに、日本以上の消費生活が営まれている。物価も高いし、給料も高い。「BOSS直聘」のレポートには、都市別のホワイトカラーの平均月収も載っている。以下が、その数字だ。

・北京 1万2590元 (約21万3000円)
・上海 1万1260元 (約19万500円)
・杭州 1万170元 (約17万2000円)
・成都 7310元 (約12万3700円)

 これを見れば、もはや日本が豊かな国とはとても言えないだろう。数字的にはまだ日本に及ばないように見えるが、これはあくまで平均値だ。それに、中国には終身雇用、年功序列がほとんどなく、彼らは高賃金を求めてすぐに転職する。

 15年前、娘たちアメリカから中国に留学した学生たちは、院卒後、上海で職を見つけ、しばらく中国に止まった。そのとき、彼らは週2回、通いの「保姆」(家政婦)を雇っていた。掃除・洗濯・食事の用意をしてくれて、500元(約8500円)だった。

 いま、その倍を出しても、誰もやってこないだろう。

(つづく)

この続きは5月27日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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