連載565 山田順の「週刊:未来地図」コロナで出生率低下、出生数激減、 従来の考え方では少子化は止まらない!(中1)

連載565 山田順の「週刊:未来地図」コロナで出生率低下、出生数激減、 従来の考え方では少子化は止まらない!(中1)

 

世界的に少子・高齢化は避けられない

 コロナ禍による少子化の加速は、日本だけの傾向ではない。藤和彦氏(前出:経済産業研究所のコンサルティングフェロー)は、さらにこう述べている。

 「世界的に『産み控え』が進んでいるので、国連の推計では2100年まで人口は増え続けるとしているが、下振れして2050年くらいから減り始めてもおかしくない。ただしこれは、コロナが引き金になったに過ぎません。都市化と女性の社会進出が進めば、どこの国でも出生率は下がります。20世紀は人口爆発の世紀と言われたが、21世紀は高齢化の世紀と言われている。メガトレンドのなかで、たまたまコロナの影響で大きく目立つ形になっていますが、これは世界的に避けられない傾向です」

 アメリカの場合、CDC(疾予防管理センター)が5月5日に公開した報告書によれば、2020年のアメリカにおける出生数は6年連続の減少を記録し、1979年以降では最低となっている。また、出生率は、100年以上前に公式記録が取られ始めて以来の最低水準に達している。

 コロナ禍でよく引き合いに出されるのが、スペイン風邪だ。スペイン風邪は1918年~1920年にかけて猛威を振るったが、収束に向かった1920年で見ると、出生数は前年比14%増の203万人まで上昇している。大流行後にプチ・ベビーブームが訪れたのである。

 しかし、当時といまでは社会状況が大きく違う。当時の女性の平均初婚年齢は23.2歳だが、2019年は29.6歳。晩婚化が進み、1人の女性が産む子どもの数が減っている。しかも、今回のコロナ禍の影響をもっとも受けたのは、非正規雇用で生活が不安定な人たちであり、とくに女性は顕著だ。コロナが収束に向かったとしても、経済的事情から、多くの人間が結婚や出産をあきらめる可能性が高い。

少子化はどのように進んできたのか?

 ではここで、日本の少子化を振り返ってみたい。

 日本の少子化は1975年ごろから始まっている。ただ、それが大きな社会問題になったのは、バブルがピークに達した1989年のこと。この年、出生率が1.57となり、それが判明した1990年に「1.57ショック」という言葉ができた。以来30年間、出生率は低迷を続けてきた。

 一方、出生数を見ると、1949年に「第1次ベビーブーム」(団塊世代が誕生)が起こり、最高の出生数である269万人を記録している。しかし、翌年の1950年には大きく下げ、1966年には136万人まで下がっている。ただし、1967年からは再び回復し、1971年から1974年にかけて「第2次ベビーブーム」(団塊ジュニア)が起こったときは、出生数は再び200万人を超えた。この間、1973年には婚姻率が過去最高を記録し、出生数も209万人、出生率も2.14を記録している。

 しかし、それ以後はずっと減り続け、2016年にはついに100万人を割ってしまった。昨年の出生数84万人は、第1次ベビーブームの1949年の269万人に比べると3分の1以下、第2次ベビーブームの1973年の209万人と比べても5分の2以下である。

 現在、団塊世代はみな70歳を超え、団塊ジュニアは40歳代後半に達している。少子化という言葉は1990年代後半から使われ出したが、それとともに進んだのが高齢化だ。2020年で高齢化率は28.7%、世界最高を更新中だ。

 子どもが少なく、老人ばかり。こんな国が活気を取り戻せるわけがない。経済的にどんどん落ち込んでいくのは、無理もない話だ。 

(つづく)

 

この続きは7月6日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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