連載569 山田順の「週刊:未来地図」バブル崩壊への「終わりの始まり」か? 株価大幅下落の先にあるもの(中)

連載569 山田順の「週刊:未来地図」バブル崩壊への「終わりの始まり」か?
株価大幅下落の先にあるもの(中)

 

AIも現在がバブルだとわかっている?

 しかし、考えてみれば、緩和縮小と金利引き上げは単なる見方に過ぎない。まだ、そうしなければならいほど、景気は回復していないし、猛スピード始まったワクチン接種もやっと人口の半分が2回以上を終え、コロナ規制が解除されたばかりである。

 したがって、景気が本格的に回復するのは、年末になると見込まれている。

 とすれば、FRBの予測するテーパリングがあるとしても、それはまだ半年以上も先の話だ。しかも、景気次第で、本当にそうなるかどうかどうかもわからない。それなのに、NY株価は下げたのである。

 つまり、こんなちょっとした観測表明でも、NY株価は1000ドル以上も下落してしまうほど、脆弱な相場、すなわちバブルだということだ。

 現在、株の取引は「超高速AI取引」である。AIが取引のほぼすべてを決めている。となると、AIは本当に慎重かつ臆病だと言わざるをえない。いったいどんなふうにプログラミングされているのか、本当に気になる。

 いずれにしても、AIもいまの株価がバブルだとわかっているのは間違いないだろう。

バブルに踊ったロビンフッダーとビットコイン

 これまで何度も述べてきたが、株価バブルはコロナ以前に起こっていた。金融緩和により、世界中で株価が上がっていた。この相場は「適温相場」(ゴルディクス相場)と呼ばれ、投資家にとっては非常に居心地がいいものだった。

 ところが、そこにコロナ禍が襲ってきて、「コロナショック」という大暴落が起こった。これで、バブルは終わるはずだった。

 ところが、起こったのはバブルの再加熱で、それは、コロナ対策のために行われた史上空前の金融緩和によってもたらされた。中央銀行が刷れるだけおカネを刷り、それを政府がバラまいた。アメリカではトランプ前大統領が、国民に給付金という名の「大盤振る舞い」をしたため、バブルはさらに膨らんだ。

 コロナ禍によって、経済は人為的に止められた。当然、景気は悪化する。世界中でGDPはマイナス成長に陥った。金利は限りなくゼロに近づき、資源の需要も減ったため、だぶついたカネは、ほとんどが株に向かったのである。

 こうして、実体経済は悪いのに、株価は上がるという現象が起こった。それも、ノンストップで上がっていくので、市場参加者は「バブル祭り」に酔いしれた。それを象徴したのが、今年の1月に起こった“ロビンフッダー”たちによるゲームストップ株の吊り上げだった。

 バブルでなかったら、こんな将来性のない会社の株に投資する人間などいない。しかし、1ドル単位で投資できる個人投資家たちは、SNSを駆使して集団で買い上げ、機関投資家やヘッジファンドを血祭りに上げることを楽しんだ。

 バブルはビットコインなどの「暗号資産」(仮想通貨)にも波及した。ビットコインは、4月に一時700万円台まで急騰したが、その後300万円台まで急落するという「ジェットコースター」相場になった。

(つづく)

 

この続きは7月13日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

【山田順】
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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