新連載『夢みたニューヨーク、住んでみたら?』
vol.2 居酒屋デートの概念がない街
ニューヨークでの生活では驚きが「スタンダート」と化している。筆者は27歳、この夏憧れのニューヨークにやって来た新参者だ。日本(神戸)で人生の大半を過ごしたせいか、いちいちビックリするようなことが毎日のように起こるので、文化の違いやカオスな出来事を中心にポップにつづっていくことにした。
〜 ニューヨークには存在しない居酒屋デート 〜
これまで日本でのデートの場所と言えば基本的に「居酒屋」。お酒好きというのも関係しているかもしれないが、全ては “とりあえず居酒屋” からスタートする。
というのも居酒屋というのは便利なもので、1000円でほろ酔いかつカジュアルな会話が楽しめる「立ち飲み」、相手が大衆に耐え得るかを判断できる「大衆酒場」、個室で身の上話をツマミに創作魚料理なんかを楽しむ「高級居酒屋」など、オケージョンや相手に合わせて選ぶことができ、女性としてはこのお店選びで「自分をどう見てくれているか」の貴重な判断材料にしていたりもする。
そして次にメニュー選び。お酒好きというところで共鳴し合えれば、気になるのは「アテのチョイス」。手書きのメニューの中から、お互いの好みを探り合うような最もワクワクする時間である。
個人的にはこの際に、唐揚げコロッケいかの天ぷら♪ 箸休めにチャーハン♪ みたいなラインアップで来られると、身も心も胃もたれ案件なのだが、とりわさに磯辺揚げ、漬物の盛り合わせに「え〜タコさんウインナーありだよね」みたいな会話ができると、乾杯が進む(個人的な嗜好が過ぎる)。
と、これまでデート相手を「居酒屋」に当てはめてタイプや性格、好みなどを探ってきたのだが、ニューヨークには居酒屋文化がない。
単にビールが飲める場所、と言ってもダイブバーにアイリッシュパブ、ジャーマン酒場に無数の醸造所、ルーフトップバーと、さすがは人種のるつぼニューヨーク。とにかくオプションが多いし、フードメニューもあったりなかったりバラバラだ。あるときはビール飲みたいよね!で気がついたら、仕事おわりにメッツスタジアムで乾杯していたこともあった。
これまで、”とりあえず居酒屋” の超安心判断材料を持っていた筆者としては、「え、どうしたらいいん」状態。学校や会社で評価をつける際に、評価基準があったら楽チンなのと一緒だ。そこで数打って学べ精神で、いろんな所でいろんな人とビールを飲み続けた結果「Be Spontenious」(自発的に、自然体で流れに身を任せること)であることが解決策だということを学んだ。
「これはこうでないといけない」日本人が持ちがちな、硬派なマインドを一度捨てて「Be Spontenious」に行動するように心がけた結果、ニューヨーク生活5カ月目でようやく「居酒屋」が必要でなくなったように思う。
– 著者のプロフィール –
ナガタミユ(Miyu Nagata)エディター/ダンサー
兵庫県出身の27歳。幼少期に観た「コーラスライン」をきっかけに舞台芸術の世界にどっぷりハマって以来、20年以上踊り続けている。また、日本の出版社で編集者として活躍したのち「書いて、踊る編集者」としてさらなる飛躍を遂げるため、2024年8月から拠点をニューヨークに移す。
過去のエピソード
vol1. ニューヨーカーは、なぜブックカバーを使わない
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