連載634 山田順の「週刊:未来地図」 円安、株安、インフレが襲ってくる! 誰も止められなくなったコロナ不況と長期低迷 (上)

連載634 山田順の「週刊:未来地図」 円安、株安、インフレが襲ってくる! 誰も止められなくなったコロナ不況と長期低迷 (上)

(この記事の初出は9月14日)

 11月に誕生する新政権で、はたして日本経済はコロナ不況を克服し、長期低迷から脱却できるだろうか? いまの自民党の総裁選挙、野党の動きを見ていると、とてもそうは思えない。嫌な気分、嫌な予感が日毎に高まる。
 アメリカも欧州も量的金融緩和の縮小に入りつつあるのに、日本だけは現状維持。このまま行くと、円安、株安が進むなかで、インフレが襲ってくるのではないだろうか?
 すでに、それを織り込んで動いている向きもある。

感染者数の減少、菅退陣による気の緩み

 コロナの新規感染者数が減少し、いま、日本全体の空気は緩んでいる。菅首相が退陣を表明し、自民党の総裁選挙で新しい「顔」が誕生することも、この緩みを助長させている。さらに、先週、株価が3万円を超えたので、市場のムードも緩んでいる。

 しかし、それだからこそ、私は嫌な予感がする。この先の日本経済に対する不安が拭いきれない。

 まず、コロナの新規感染者数がなぜ減少に転じたのか、よくわかないことがある。メディアや専門家はワクチン接種が進むなか、人流抑制、行動変容の効果が出たと言っているが、そう信じるに足るデータがない。よって、信用できない。いつまた、第6波がやって来るとも限らない。

 アメリカを見ても、欧州を見ても、ブレイクスルー感染が起こり、もはや収束は見通せなくなった。

 そして、いま最大の注目が、自民党の総裁選。それに続く、総選挙で次の首相が決まるが、新首相が大改革をやれるとはとても思えないのだ。

 現段階で、自民の総裁選には、河野太郎・行革担当相(57)、岸田文雄・前政調会長(64)、高市早苗・元国務相(60)の3人が立候補しているが、3人とも経済政策が現状踏襲にすぎない。誰も、いまの異常な金融緩和を是正すること、赤字財政を改善しようとはしていない。これでは、コロナ不況を克服し、長期低迷から脱却するのは無理だろう。

河野太郎は金融政策を「日銀に任せる」と

 それにしても、自民総裁選3候補は、量的金融緩和の副作用についてほとんど考慮していないばかりか、財政赤字に対しての危機感もない。これは異常だ。

 現時点で、国民人気N0.1の河野太郎氏は、立候補表明会見で、これまでのアベノミクス的政策とは距離を置くと表明したが、財政出動については「有事の財政(支出)は避けられない」とした。ただし、「規模も大事だが、未来を見据えどこに出すべきか議論が必要」とは指摘した。

 それでも、ひと言で言ってしまえば、彼の政策はバラマキである。

 さらに、菅首相が宣言した「脱炭素」(カーボンニュートラル)を経済政策の中心に据え、原発を維持しつつも、蓄電池、太陽光発電技術などへの投資拡大で経済成長を目指すと述べた。世界のトレンドに遅れてはならないという意識が、見え見えである。

 しかし、欧米主導のカーボンニュートラルによる「グリーンニューディール」は、早急に進めると、日本経済を危うくする。この舵取りは本当に難しい。

 河野氏の政策の最大の問題点は、金融政策に関して「日銀に任せる」としたことだ。これでは、金融緩和は永遠に続いていくことになる。出口戦略がないと、日本経済は低迷したままになる。カンフル剤を打ち続ければ、どんな経済も疲弊する。

(つづく)

 

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