連載647 山田順の「週刊:未来地図」 中国の「第二文革」による経済失速が日本を直撃。
インフレ大転換で生活崩壊! (完)
賃金が上がらなければスタグフレーションに
欧米でインフレが進み、中国がインフレ輸出国に転じたいま、日本がインフレに転じないと思える理由は見当たらない。日本経済の中国依存度は驚くほど高い。日本にとって中国は、2007年以降、輸出入総額でトップを占め続けている。日本企業で、中国依存度が5割を超えている大企業は20社に余る。
それを思うと、今後、欧米がテーパリングに入り、金利差から円安が進めば、輸入物価の高騰から、デフレからインフレに一気に転換する可能性が高い。
しかも、そのとき、日本経済はインフレに耐えられない可能性がある。つまり、物価は上昇しても賃金が上がらないというスタグフレーションに陥ってしまうのだ。インフレの進行具合にもよるが、ハイパーインフレとなれば、私たちの暮らしは困窮し、崩壊する。
現在、日本は日銀による国債の実質的な引受けという「財政ファイナンス」を行なっている、そのため、インフレによって金利が上がれば、国債の償還が行き詰まる。同時に、国債の資産価値が毀損され、国債で運用されている預貯金も目減りする。
経済成長を伴わないインフレは貧困を招く
インフレになっても円安なのだから、経済を主に輸出に頼っている日本は、輸出が伸びることにより経済を復活させられるという見方がある。
しかし、為替が変動相場制である以上、円安になっても国際競争力に関係する実質的な為替レートは変わらない。つまり、日本の国際競争力は向上しない。円安は輸出には有利にならず、輸入を一方的に不利にするだけである。
これまで、日本経済は輸出で稼いだお金で、食料や資源を輸入してきた。しかし、円安とインフレが進めば、輸入で手にすることができた輸入品が大幅に減少する。この悪循環で、おそらく食料品は大幅に値上がりするだろう。こうして、国民生活は極度に困窮することとなる。
日本のリフレ論者は、安倍・菅政権の下で、インフレを熱望してきた。それは、インフレが経済成長を引き起こして景気をよくしてくれると信じてきたからだろう。しかし、これは本末転倒な話で、経済成長、好景気がインフレを起こすのであって、その逆は成立しない。つまり、経済成長を伴わないインフレは貧困を招くだけで、なにもいいことがない。
いくらコロナ禍とはいえ、いまの世界はグローバル経済の進展によって密接に結びついている。主要国経済がインフレになり、金利も上がれば、日本だけがその影響を受けないですむわけがない。いまこそ、私たちはインフレ大転換に備えなければならない。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。