連載670 やがて世界経済の成長は止まる! 早まる人口減で2050年から投資環境は激変(中2)
「プラスサム」から「マイナスサム」に
現在、世界の人口研究者の間では、国連の人口が増え続けるという予測は、多く見積もりすぎているという見解が主流だ。ワシントン大学のレポートはそれを明らかにしただけで、それほど驚くことではないという。
人口統計を専門にしている学者に言わせれば、世界人口は2040年から2060年の間に90億人で頂点に達し、その後は減少に転じる可能性が高いという。
仮に2050年から人口減に転じるとすると、その前後には、「シンギュラリティ」 (singularity)もあるし、地球温暖化による「気温上昇1.5度」も控えている。まさに、歴史のターニングポイントだ。
実際、すでに25カ国前後の国で人口は減り始めている。この傾向は今後も続き、人口減少国数は2050年までに35カ国を超えるだろうと言われている。
すでに人口減に転じた国の筆頭は、わが日本である。そして、韓国、スペイン、イタリア、東欧の多くの国々で人口は減り始めている。日本、スペインなど23カ国は、2100年までに人口が半減すると予測されている。
そこで、人口減が経済成長をマイナスにするという点で考えると、投資におけるパッシブ投資が成り立たなくなることがわかる。
これまでの人口増社会においては、投資は「プラスサムゲーム」だった。これは、ゲームに参加しているプレイヤーの損得の合計がプラスになることを言う。つまり、インデックスで市場全体に投資していれば、これまでは儲かったのである。
しかし、ひとたび人口減に転じれば、このゲームは、プラスマイナスがゼロの「ゼロサムゲーム」か、マイナスになる「マイナスサムゲーム」になってしまう。
パッシブ投資で誰もが利益を分かち合えた時代は終わりを告げ、誰かが儲かれば誰かが確実に損をするという時代となって、アクティブ投資に成功した者しか、市場での勝者はいなくなってしまうのだ。
世界全体の合計特殊出生率は下がっている
人口減をもたらす最大の原因は、女性が子どもを産まなくなったことである。ワシントン大学のレポートによると、出生率はこの先どんどん低下し、少子化が加速するという。
少子化の背景には、技術革新などによる経済発展がある。経済発展によって生活が豊かになるにつれて、死亡率は低下し、社会は「多産」から「少産」へと向かう傾向が強まった。まさに、20世紀はそういう世紀だった。
国連の統計資料によれば、5歳未満児の死亡率は国によってバラつきはあるが、1990~1995年には出生数1000人あたり91人だったが、2015~2020年は40人にまで低下した。途上国の多くが経済発展したため、全世界の合計特殊出生率(以下、出生率と略す)は、1985~1990年は3.44だったが、2015~2020年には2.47へと低下した。
1950年以降の出生率の推移を見ると、ほとんどの国・地域で著しく下落している。2015~2020年で4.72と世界最高水準の「サブサハラ」(サハラ砂漠以南のアフリカ)は、1950~1955年は6.51だった。北アフリカ・西アジアは2015~2020年は2.93だが、1950~1955年は6.57だった。ちなみに、日本の現在の出生率は、1.36である。
出生率が2.1を下回ると、人口は減少に転じるという。
1950年には、1人の女性が生涯に産む子どもの数は平均4.7人だった。ワシントン大学のレポートでは、世界全体の出生率は2100年までには1.7を下回るとしている。
(つづく)
この続きは12月15日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。
山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。
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