連載684 日本と同じ道を歩むのか?
人口減少で中国の「失われる10年」が始まった!(完)
中国経済のリアルは脆弱で見かけ倒し
日本では、ついこの前まで「中学崩壊論」が盛んだった。しかし、GDPの日中逆転が起こり、その後も成長を続ける中国を見て、多くの日本人は自信を喪失してしまった。すでに、中国のGDPは日本の約3倍に達していると言われると、負け犬根性で「でも、中国は—-」と、強権独裁体制を非難するだけになった。
しかし、そういう意識が、中国経済のリアルな姿を見えなくする。実際のところ、中国経済はメディアが伝えるほど、強大ではない。むしろ、その内実を見ると、脆弱で見かけ倒しとも言える。
たとえば、中国のGDPの約45%が工場や住宅、インフラの建設などの固定資本形成に向けられている。つまり、中国では採算性など度返しして、マンションや新幹線などがつくられ過ぎている。
そのため、国民の消費がGDPに占める割合は40%弱である。これに対してアメリカは、約70%、日本は約60%である。いっとき、中国の市場の大きさが喧伝されたが、市場はそこまで大きくないと言えるのだ。
日本と同じく「失われた10年」に突入か?
現在の中国経済は、財政赤字と外国からの投資によって支えられている。財政赤字は毎年増え続け、最近、中国財政科学研究院が発表した報告書では、今後、中国の赤字は拡大し、2025年には10兆元(約170兆円)を突破し、2021年の2.3倍になる見通しになっている。
「世界の工場」とされる中国だが、中国の輸出の半分は外資企業によるものだ。日本を含めた外資企業は中国に工場をつくり、そこで製造した製品を世界に輸出している。
この観点から言うと、中国の貿易黒字の半分は外資が稼いでいるのであり、貿易黒字を失えば中国は国内のインフラ投資ができなくなる。
まして、習近平主席が鳴り物入りで進める「一帯一路」の資金もままならなくなる。
そのため、中国は外資に出て行かれると困るので、規制を強化してきた。しかし、このまま規制が強化されると、多くの外資が工場を捨てても中国を出ていくだろう。すでに、世界のサプライチェーンから中国を外す「中国デカップリング」が進んでいる。
こんな状況なのに、習近平主席は、なぜ「共同富裕」などという社会主義政策を進めるのか、理解不能だ。人口減少を目前にして、このままいけば「中華民族の偉大な復興」による「中国の夢」は実現できなくなると、焦り出したのだろうか。
本来なら、香港を強奪せず、鄧小平以来続いてきた「改革開放路線」をさらに進めるべきなのに、完全に逆行している。
はたして、コロナ収束後の中国はどうなるのだろうか?見えてくるのは、日本と同じ「失われた10年」に突入する中国の姿である。このままでは、日本が衰退するのといっしょに、中国も衰退する。東アジア全体が沈んでいく可能性が高い。
(了)
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山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。