連載689  中国経済の失速が日本を直撃、このままでは私たちの暮らしは窮地に!(上)

連載689  中国経済の失速が日本を直撃、このままでは私たちの暮らしは窮地に!(上)

(この記事の初出は2021年12月21日)

 

1年8カ月ぶりに金利を0.05%引き下げ

 2021年12月20日、中国人民銀行(中央銀行)は、「最優遇貸出金利」(LPR、ローンプライムレート)の1年物を11月までの3.85%から0.05%引き下げた。利下げは2020年4月以来、1年8カ月ぶり。中国のLPRは、優良企業に適用する貸出金利の参考指標で、事実上の政策金利である。
 現在、世界中がインフレに見舞われ、アメリカではFRBがテーパリング後の利上げを表明しているというのに、中国だけが逆行して金利を下げる。なぜ、こんなことをしなければならないのか?
 それは、景気が悪化し、経済減速が加速化してきたからだ。すでに、中国経済はコロナ禍の影響を差し引いても、成長が大きく鈍化している。
 LPR利下げに先立って、中国人民銀行は、15日に市中銀行から強制的に預かるお金の比率を示す「預金準備率」を0.5%引き下げている。LPRが大企業向けなら、こちらの引き下げは中小零細企業の資金繰りを支援するためだ。
 つまり、中国は、市場への資金供給を増やす金融緩和に踏み切ったのである。その目的は、ずばり景気対策。景気減速を食い止めようというのだ。
 じつは、この利下げは予想されていたもので、多くのアナリストが今後もさらなる利下げあると指摘している。

「発展」ではなく「安定」を重視する

 もはや、中国経済の減速を疑う者はいない。北京の発表がどうであれ、中国の経済指標はすべてが悪化している。不動産投資は大幅に減り、北京、上海などの大都市の雇用も悪化している。
 10月18日に発表された2021年7~9月期の中国の実質GDP成長率は4.9%で、ギリギリのラインとされる5%を下回った。したがって、10~12月期は4%前後まで低下するとの見方が大勢となっている。
 それでも中国経済は、今年は年間で8%を維持するとされている。しかし、来年は通年で5%を割るという見方も出てきた。
 減速傾向が鮮明になってきたので、中国の経済政策を担う共産党中央財経委員会弁公室の韓文秀氏は、「安定」という言葉を持ち出した。来年の中国経済の目標を「安定」としたのである。
 中国では、12月10日から3日間、習近平主席も出席した中央経済工作会議が開かれた。その席で、韓文秀氏は次のように述べたと新華社が伝えている。
「すべての地域と機関が経済の安定を支え、中国経済の安定化につながる政策を積極的に導入する責任を担う必要がある。また、縮小効果のある措置の採用には慎重でなければならない」
(つづく)

 

この続きは1月24日(月)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。  ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

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