連載701  地球温暖化の不都合な真実(2) 「脱炭素」を進めれば進めるほど貧しくなる! (下)

連載701  地球温暖化の不都合な真実(2) 「脱炭素」を進めれば進めるほど貧しくなる! (下)

(この記事の初出は1月4日)

 

放置され続けるソーラーパネルの廃棄問題

 ソーラーパネルには、有害物質である鉛、カドミウム、セレンなどが含まれているため、専門の業者でないと廃棄処理ができない。いわゆる一般ゴミではなく、産業廃棄物扱いである。
 日本では2010年ごろから、一般家庭でも太陽光発電設備を設けるようになったので、2040年ごろになるとソーラーパネルの大量廃棄が始まる。その量、およそ80トンとされるが、廃棄対策はまったく進んでいない。
 現状では土中に埋めるしか手がないと言われているが、そうすれば有害物質で土壌が汚染されてしまう。また、廃棄コストが高いので、不法投棄が横行しかねない。そうなれば、土壌汚染はさらにひどくなる。
 ソーラーパネル製造の世界シェアの大半を握るのは、中国である。現在、世界中が中国製のソーラーパネルで埋め尽くされようとしているが、どの国も廃棄処理問題については口を閉ざしている。
 中国は、内モンゴル自治区のクブチ砂漠に、世界最大のダラト太陽光発電所を建設した。敷地面積は約120万平方メートル、年間発電量は20億kWhという巨大な発電所で、当局は「今後、砂漠すべてをパネルで覆い尽くす」という声明を出した。
 しかし、いずれやって来るソーラーパネルの廃棄処理に関しては、なんのコメントもしなかった。

「脱炭素先行地域」で太陽光発電を推進

 日本政府は、昨年、「2050年温室効果ガス実質ゼロ」の目標を定め、「2030年温室効果ガス46%削減、さらに50%の高みを目指す」ことを宣言した。

 そのために、全国で少なくとも100カ所に「脱炭素先行地域」を設け、そこでは他地域に先駆けてカーボンニュートラルを実現するとした。「脱炭素先行地域」では、2030年までに家庭や企業などの電力消費にともなう温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標が掲げられた。

 では、「脱炭素先行地域」とは、どこを指すのだろうか? 

 情報を総合すると、そこは、都市、農村などには限定されず、デジタル化を進めている自治体が優先的に指定されるようだ。そうした地域では、公共施設はもとより、一般のビル、マンション、住宅にもソーラーパネルが設置され、太陽光発電が促進されることになる。

 国の目標では、ソーラーパネルを設置する公共施設の割合を、2030年で50%、2040年で100%にすることになっている。私の住む神奈川県では、都市部が多いことから、今後は屋根置き太陽光発電設備の導入を強力に推進する計画が策定されている。

 しかし、導入するのはいいが、その先はどうするのだろうか? 前記したように、パネルは寿命がきたら廃棄しなければならない。現在、脱炭素政策は「見切り発車」状態と言ってよく、単なるバラマキの域を脱出していないのだ。

(つづく)

 

この続きは2月9日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。  ※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

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