連載703  地球温暖化の不都合な真実(3) じきに始まる「大移住・大移民時代」に備えよ! (上)

連載703  地球温暖化の不都合な真実(3) じきに始まる「大移住・大移民時代」に備えよ! (上)

(この記事の初出は1月5日)

 地球温暖化を食い止めるための「脱炭素」政策は、現状では行き詰まるだろう。「2050年カーボンニュートラル」は実現できない可能性のほうが高い。人々は、カーボンニュートラルのために、いまの暮らしを捨てることはでき
ないと思うからだ。
 しかし、温暖化が本当に待ったなしだとしたら、私たちはライフスタイルを変えらざるをえなくなる。それは、温暖化の被害を受ける地域を捨て、新天地に移住することだ。いわゆる「環境移民」である。
 じきに、「大移住・大移民時代」が始まるだろう。

 

温暖化対策で人間らしい生活は行き詰まる

 現在、世界各国が目指しているのは、「パリ協定」で採択された目標を実現させること。すなわち、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比べて1.5度以内に抑えることだ。そのために、温暖化の犯人とされる二酸化炭素を排出しない「脱炭素社会」を構築することである。
 その方法として、主にクルマのEV化、再生可能エネルギーへの転換などがあるが、それだけでは不可能として、最近は、生活を根本から変えることが求められるようになった。
 現在、個人レベルで求められる温暖化対策として、次のようなことが挙げられている。

・エアコンの冷房の設定温度を27度から28度にする
・エアコンの暖房の設定温度を21度から20度にする
・エアコンの稼働時間を1日1時間短くする
・冷蔵庫に食料、飲料を詰め込みすぎない
・使っていない電源プラグは抜いておく
・間隔を開けずにお風呂に入る
・シャワーの流しっぱなしをやめる
・洗濯はまとめてする
・なるべくゴミを出さないようにする

 要するに、二酸化炭素を出さないために節約生活を心がけろということだが、なんらかの無駄があるのが人間の暮らしだから、実践は難しい。それに、こんなことをやると、暮らしは息苦しくなるだけだ。

クルマや飛行機に乗るな、肉を食べるな

 いまや「環境」(エコ)と言えば、“環境少女”のグレタ・トゥンベリさんの名を挙げないわけにはいかない。彼女の発言はいつも過激だが、彼女が言っていることは、まったく現実的ではない。
 彼女を含め、過激な環境活動家たちは、「地球を救う方法」として「気候正義」(climate Justice)を掲げ、その具体的な行動として、二酸化炭素を排出するガソリン車、ディーゼルエンジン車に乗るな、飛行機や客船に乗るな、メタンガス発生源は牛などを飼育している酪農であるから肉は食べるなどと主張する。
 こうなると、どこに行くにも徒歩や人力車になるし、誰もがヴィーガン(菜食主義者)ならなければならない。環境過激派は、現代文明の否定論者であり、私たちの生活を貧しくさせようとしているとしか思えない。
 一部の環境過激派は、たとえば、昨年11月のCOP26グラスゴー会議では、会場の外でSUVやガソリン車のタイヤの空気を抜くようなことまでやった。
 これでは、地球を守るのではなく、破壊・犯罪である。

(つづく)

 

この続きは2月11日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

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