連載724  英国はなぜコロナ規制をやめたのか? そうできない日本の集団主義の哀しい現実(下)

連載724  英国はなぜコロナ規制をやめたのか?
そうできない日本の集団主義の哀しい現実(下)

(この記事の初出は1月26日)

 

「英国人にとってすでにコロナは風邪だ」

 ボリス・ジョンソンは、次のようなことを言っている。「オミクロン株はほとんど重症化しない。すでに感染はピークアウトし、Covid19(新型コロナウイルス)は、パンデミック(pandemic)からエンデミック(endemic)に変わった。したがって、政府はコロナ対策を、法的な強制から、人々が政府の忠告を受けつつ自分で慎重に判断するものへと変えることにした」
 エンデミックとは、風土病というような意味合いで、コロナは「ウイズコロナ」としてヒトと共存が可能。風邪やインフルエンザと変わりないということだ。
 この見解は、英政府のワクチン政策のアドバイザー、クライブ・ディクス博士の見解と同じだ。また、デイビット・ヘイマン、ロンドン大学教授の見解とも符合する。
 ヘイマン教授は、「英国は国民の90~95%がコロナの免疫を獲得し、北半球でもっとも免疫率が高く、すでに集団免疫に達したようなので、もうワクチンの強制は不要だ。英国人にとってすでにコロナは風邪だ」と述べている。
 これらは、みな英国のメディアが伝えていることで、それを追っていれば、なぜ、英国が方針転換したのか確認できる。

なんの知見も権威性もない専門家集団

 このような経緯を見ると、日本政府がやっていることは情けないと言うほかない。英国よりはるかに陽性者数が少ないというのに「マンボウ」を決め、その拡大を決めるのに「専門家の承認が得られたため」と、もったいぶって言っている。
 専門家とは分科会のことで、この会長である尾身茂氏は、「オミクロン株はこれまでのデルタ株などとは異なるので、これまでの対策の踏襲ではなくオミクロン株の特徴に合わせたふさわしい戦術をとるべきだ」と言うものの、なんら具体的なことは示していない。
 これまでも、この人は科学的な知見、データを示して物事を言ったことがない。

科学的知見を大事にし、実証実験まで 

 英国は、産業革命を起こした国、ニュートンを生んだ国だけあって、なにをするのにも科学的な知見を大事にする。そして、知見を得るために実験をする。
 去年のサッカーの欧州選手権では、スタジアムに観客を入れて密をつくり、感染がどうなるかの「実証実験」までやった。
 それに対して日本はどうか? 
 国立感染研はデータを独占していながら、これまで、感染対策に役立つ知見を出したことがない。政治家もとくにデータを要求せず、海外の報道や国内の雰囲気によって、対策を決めている。しかも、決めるにあたって延々と会議をやっている。
(つづく)

この続きは3月15日(火)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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