陛下、にじむ平和の願い

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共同通信
天皇陛下

 ロシアのウクライナ侵攻を巡り、天皇陛下が憂慮を深められている。憲法上、政治的発言が禁じられる中、2月の誕生日記者会見では、慎重な表現を用いて平和への願いをにじませていた。側近は「子どもを含め多くの人が犠牲になっていることに心を痛めておられる」と最近の様子を語る。

 「国と国との間では、さまざまな緊張関係が今も存在しますが、人と人との交流が、国や地域の境界を越えて、お互いを認め合う、平和な世界につながってほしい」

 情勢が緊迫していた2月21日、誕生日を前に会見に臨んだ陛下は、五輪を通して目にした選手同士の心温まる交流に続ける形で、こう述べた。

 3日後の24日、ロシアは侵攻を開始した。宮内庁幹部は「陛下はあくまで一般論として思いを語られたが、ウクライナの平和を願ったとみるのが自然だろう」と話す。名古屋大大学院の河西秀哉准教授(日本近現代史)は「憲法との兼ね合いで、ぎりぎりのラインにある異例の発言だった」と分析した。

 陛下はウクライナ侵攻の報道を欠かさず目にしているという。14日は外務省局長の進講があり、ウクライナを含む国際情勢の説明に1時間以上にわたって耳を傾けた。