連載779  宇宙覇権を握る国が最後に勝つ。 宇宙ステーション乱立時代がやってくる! (上)

連載779  宇宙覇権を握る国が最後に勝つ。 宇宙ステーション乱立時代がやってくる! (上)

(この記事の初出は5月10日)

 ウクライナ戦争という地上での戦いにばかりに目を奪われていると、今後、世界でなにが起こっていくのかわからなくなる。以前の配信記事で述べたように、いまや戦線は宇宙にまで拡大している。その最前線になるのが、宇宙ステーションだ。
 今後、「ISS」(International Space Station:国際宇宙ステーション)のほか、各国の宇宙ステーション、民間の宇宙ステーションが次々に建設される。2020年代後半からは、地上にはEV、空には宇宙ステーション、ヴァーチャル空間(メタバース)にはアバターという時代になるだろう。

 

ロシアが去っても「ISS」は落ちてこない

 今回は、まずお詫びすることから始めなければなりません。それは、以前の配信記事『米対中ロによる「新冷戦」は宇宙に拡大!すでに全人類が監視下に入っている』に、私の認識不足があったからです。
 この記事で私は、西側への経済制裁の報復として、ロシアの宇宙機関「ロスコスモス」(ROSCOSMOS)が、「もしわれわれとの協力をやめたら、ISS(国際宇宙ステーション)がアメリアやカナダ、中国やインドに落下するのを誰が防ぐのか?」と脅かしたことを取り上げました。
 そして、これは単なる脅かしではない、現実に起こり得る話だとしました。
 しかし、宇宙開発に詳しい専門家から、「そんなことはありえない。アメリカは、新しく開発された民間宇宙船の『シグナス』(Cygnus)で、自力でISSの制御が可能だ」と指摘されたのです。
 現在、ISSの制御は、ロシアの補給船「プログレスMS」(Progress MS)によって行われていますが、シグナスで十分代用可能だというのです。つまり、ISSは落下しません。ロシアの脅かしは、単なる脅かしにすぎないということです。
 ちなみに、「シグナス」は、ノースロップ・グラマン社が開発・運用する補給船で、エンジンは日本のIHIエアロスペース社が提供しているそうです。
*というわけで、専門外のことは、もっと詳しく調べてから書くべきと、私は深く反省しました。誤解された読者の方、本当に申し訳ありませんでした。お詫びいたします。
 では、次から、本題に入ります。

宇宙覇権を打ち立てるとトランプ前大統領

 中国は現在、アメリカの「GPS」(Global Positioning Systemに対抗して、独自の「北斗衛星導航系統」(BDS:ベイドゥ・システム)を構築し、全世界規模で展開している。すでに、このシステムを構築する衛星「北斗」(ベイドゥ)が35基、地球上の軌道を周回している。
 中国の「北斗」は、「一帯一路」を宇宙空間まで広げる計画の一環で、中国ではこれを「一帯一路空間情報回廊」と呼んでいる。「北斗」は、途上国を中心にすでに30カ国以上をカバーしていて、こうした国々では当然ながら中国の政治的影響力が強まっている。
 現在、世界に
だろう。約」には欠陥がある。
 それは、原則的に平和利用をうたっているだけで、明確に禁止されているのは、「宇宙空間への大量破壊兵器の配備」および「月およびその他の天体への軍事利用は一切禁止」の2点だけということだ。そのため、軍事衛星を活用したり、宇宙兵器を配備したりすることは、各国による条約の解釈次第ということになる。
 ロシアと中国は、明らかに条約を無視し、覇権を得をようとしている。

(つづく)

 

この続きは6月1日(水)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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