ジャパン・ソサエティー(JS)・ギャラリーは、10月10日から来年1月11日まで、日本美術史に新たなページを加える3作家、池田学氏、天明屋尚氏、そしてチームラボの作品を紹介する展覧会「異形の楽園:池田学、天明屋尚、チームラボ」を開催する。
それに先駆け今月12日、13日には関連プログラムとして、「ポンジャ現懇」設立10周年記念シンポジウム「来たるべき新しい波のために:戦後日本美術史の現在」が開催された。
アレクサンドラ・モンロー氏が企画したグッゲンハイム美術館での「戦後日本の前衛美術展(1994年開催)」以来、日本の近現代美術についての関心は高まっており、同展が研究の第一波を作ったとすれば、近年の具体やもの派など60年代美術に対する関心の高さは、第二波を形成しているといえる。このシンポジウムでは、ポンジャ現懇の設立10周年を記念して、大学院生レベルから最前線で活躍する美術史家まで、最新の研究発表をとおして、次の第三波がどこから立ち上がってくるのかを探った。
学生の部では、「建築家・丹下健三氏などの建築」「奇譚クラブ(1947年11月創刊)や画家の伊藤晴雨氏のSM芸術世界」などをテーマに、またプロフェッショナルの部では「グラフィックデザイナー・田名網敬一氏と美術家でありグラフィックデザイナー・横尾忠則氏」「写真家・畠山直哉氏」など多岐にわたった。
映像上映では、同ギャラリーの手塚館長が“近年でもっともジーニアスなアーティストの一人”だと評価する、NYを拠点に活動する荒川医氏のパワルフなパフォーマンス、美術家集団Chim↑Pom(チンポム)から届いたばかりの貴重な映像公開などがあった。日本美術史をさまざまな視点で網羅できる内容とあって、熱心にノートをとる参加者が多数見受けられた。
ポンジャセミナーは11月4日、12月8日、2015年1月5日の午後6時半〜8時半にも開催される。詳しくはウェブサイトから。www.japansociety.org
「ポンジャ現懇(PoNJA-GenKon)」は、戦後日本美術史の研究者を中心とした学術的メーリング・リストのグループ、富井玲子氏とJSギャラリー手塚美和子館長により2003年4月に設立された。
アーティスト/みどころ
☆池田 学氏(1973年生)
今回展示されるおよそ25点の作品のうち12点は池田氏の作品。緻密に描きこまれた細密画はかなりの制作時間を要することでも知られおり、これだけの作品数を集めた展示は前例がない。
様々な情報が凝縮された同作品群をより深く理解してもらうために、比較参考作品として、日本のファンタジーアニメ、宮崎駿氏の80年代の傑作「風の谷のナウシカ」のペーパーバック復刻版、浮世絵の巨匠北斎の「神奈川沖浪裏」、江戸の奇想画家伊藤若沖の絹本着色掛軸も同時展示。
☆天明屋 尚氏(1966年生)
本展覧会のハイライトの1つ、ネオ日本画家・天明屋氏による初の大型インスタレーション作品「韻」(2012年制作)。壁一面を覆うほどの一対の絵画の大画面には、無数の騎乗の兵士や歩行兵らが刀と槍を振るい勇敢に繰り広げる戦闘シーンが描かれている。
レオナルド・ダ・ヴィンチなどのルネッサンス時代の巨匠が描いた壮絶なバトル・シーンに影響を受けた同作品は、天明屋のいうところの現代の「和魂洋才」の手法によって、その活気に溢れ大胆な構図が伝統的日本絵画に見られる金箔の背景の中に浮き上がってくる。
☆チームラボ(2001年設立)
今回の「異形の楽園」展が米国の美術館デビューとなる超テクノロジスト集団チームラボ。同グループは13年前に東京で形成され、現在は300人あまりものアーティスト、デザイナー、コンピューター・エンジニア、数学者など多岐にわたり、さまざまな分野の専門家から成り立っている。
「世界は、統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う」 (2013年制作)と「生命は生命の力で生きている」(2011年制作)はともに米国初公開。さらに本展覧会のために、現在制作中のインタラクティブ・デジタル・プロジェクション作品も発表される。
特別出版物
ウィスコンシン大学のチャゼン美術館協力のもと、同展覧会のカタログを出版。展示作品のフルカラー・イメージ、アーティストインタビューなども含まれるボリュームたっぷりの一冊だ。展示と合わせて購入したい。
「異形の楽園:池田学、天明屋尚、チームラボ」
【場所】JSギャラリー: 333 E 47th St(bet 1st & 2nd Ave)
【日時】2014年10月10日(金)〜2015年1月11日(日)
【チケット購入】ボックスオフィス:212−715−1258
【展覧会の解説ツアー】日本語/金:午後6時より
英語/火〜日:午後2時30分より、金:午後7時より
※展覧会入場チケットを持っている人は無料(所要時間は約1時間)
開館時間:火〜木:午前11時〜午後6時
金:午前11時〜午後9時
土・日:午前11時〜午後5時
月・祝日は休館
入場料:一般:12ドル/シニア・学生:10ドル/
会員・16歳以下:無料
毎週金曜午後6時〜9時は無料