連載790  今秋、日本経済に訪れるメルトダウン 「失われた30年」から「どん底の30年」へ (中1)

連載790  今秋、日本経済に訪れるメルトダウン 「失われた30年」から「どん底の30年」へ (中1)

(この記事の初出は5月17日)

 

国債の大量発行も貧困化の大きな要因

 1990年のバブル崩壊以後の「失われた30年」で、日本は確実に貧困化してきた。ここ数年ではっきりしたのは、日本人の給料(可処分所得)がまったく上がらず、今後、企業に勤めるだけでは生活はままならなくなるということだ。退職金も年金もじきになくなろうとしている。
 それなのに、子どもたちは、いまだに受験勉強を強要され、「いい大学→いい企業」という「人生コース」を歩かされている。すでに、このコースは現実ではなくなり、中流という暮らしもほとんど消滅した。
 こうした日本の貧困化を招いたのは、少子高齢化という根本問題を解決せず、経済衰退を「バラマキ」で解消しようとしてきた政府の誤った経済政策にある。日本政府は、自由主義、資本主義経済を尊重せず、国家主導の社会主義、経済政策によって、問題を解決しようとしてきた。
 そのため、国債を大量発行して、それで得たカネをバラまき、経済対策と称してきたのである。これで、経済がよくなるはずがない。
 5月10日、財務省は国債や借入金などを合わせた政府の債務、いわゆる“国の借金”が、3月末の時点で1241兆円余りと過去最大を更新したことを発表した。この政府債務はGDPの3倍近くに達するという異常な額で、もはや返せるあてなどない。
 いくら借金があっても、それを上回る収入があり、きちんと返済できれば国も国民の暮らしも貧しくはならない。しかし、日本は借金に借金を重ねているのだ。

 

日本財政は「自転車操業」状態にある

 日本の名目GDPは、ここ10年間、約500兆円で、ほとんど増えていない。そればかりか、ここ2年間は、コロナ禍により減少している。それなのに、メディアや専門家(?)は、国債の大量発行でまかない続けている日本財政の異常さを指摘しない。 
 そればかりか、「政府債務は一般の借金とは違う」「国債が国内で消化されている限り財政は破綻しない」「プライマリーバランスなど問題ではない」「もっと財政出動せよ」と言う意見を垂れ流すのだから、日本は異常を通り超している。
 現在、日本では毎年35~40兆円の新規国債の発行が続いている。2022年度の財務省の国債発行計画では、国債の発行総額は215兆380億円で、新規国債は36兆9260億円。このうちインフラ整備などに充てる建設国債はたった6兆2510億円で、残りはすべて赤字国債。その額は30兆6750億円に達している。
 要するに、国債はほとんどが赤字の補填のために発行されているわけで、日本財政は自転車操業状態なのである。

 

「キシダに投資を!」というファンタジー

 もはや日本の財政は、なにかちょっとしたこと、具体的には金利上昇で国債価格が下落すれば、たちまち行き詰まる。だから、日銀は金融緩和を止められず、金利抑制のための「国債買いオペ」を続けている。そうして、政府はこの先も毎年35~40兆円の新規国債を発行し続けるというのだから、常軌を逸している。
 このまま仮に毎年40兆円ずつ国債発行を積み上げれば、どうなるか? 2030年には、40兆円×9年間で、合計で360兆円も政府債務が増える。
 はたしてこんな異常な国家運営が成り立つのか? それなのになぜ、政治家は日本を復活させられると平気で言えるのだろうか?
 私には理解不能だ。
 これが民間会社なら、こんな超赤字の不良企業の社長に誰もならないだろう。
 5月5日の「子どもの日」、子どもの数が記録的に減少しているという発表があった日、岸田文雄首相は、ロンドンのシティで、自らが掲げる「新しい資本主義」の講演を行い、「日本経済はこれからも力強く成長を続ける。安心して日本に投資をしてほしい。Invest in Kishida!(キシダに投資を!)」と強く訴えた。
 日本の政治家は、もはやファンタジーに生きているとしか言いようがない。


(つづく)

 

この続きは6月16日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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