話題のファッションイベント 「ポップ・アップ・フリー」

今、メンズファッションがアツい!
M・Williams × Aya Komboo

ニューヨークで開催されたポップ・アップ・フリー。ファッション界のセレブディレクター、ニック・ウースター氏(右)も参加

レディース・ファッションに比べメンズは規模が小さいと思われがちだが、特に今、メンズファッションが面白い。トム・ブラウン、バンド・オブ・アウトサイダーズ、フリーマンズ・スポーティング・クラブ、トッド・スナイダーとニューヨーク発メンスウェアブランドの東京出店が相次ぎ、10/31-11/2、東京神宮前ではニューヨーク発の期間限定ファッションイベント「ポップ・アップ・フリー」(thepopupflea.com)が開催されたばかり。ファッションジャーナリストとして日米で活躍するAya Komboo氏と同イベントの発起人であるMichael Williams氏が特別対談。

Aya Komboo(以下A):私が雑誌「Free&Easy」(www.east-com.co.jp)の取材を通して、ニューヨークで活躍するさまざまなファッション関係者から聞くことは、日本人のアメリカン・トラッドへの敬意、そしてルーツへの探究心はアメリカ人よりも勝るということ。そしてアメリカ人が作るアメリカン・トラッドよりも日本人が作るアメリカン・トラッド的アイテムの方が、細部まで手の込んだものづくりをしていて優れている、という言葉まで出てきます。

Michael Williams(以下M):日本人はその時代背景やなぜどのようにそうなったかなど、オーセンティックとは何かを追い求め、知ろうとする。アメリカの場合はそういったオーセンティシティに興味はあるものの、その事実をまとめているメディアが今までなかなかありませんでした。私はJ.PRESSで働いていた時代に日本のファッション雑誌を含めカルチャーを間近で見て来て、とてもインスピレーションが沸きました。だから私はアメリカ人が知りたいと思っていたことを日本人がやっていたような切り口で英語で発信しようとブログ、A Continuous Lean(www.acontinuouslean.com)を2007年に始めました。

A:A Continuous–は私もしばしばチェックしています。少量生産で丁寧なものづくりをしているアメリカンカンパニーの様子が見えるところは素晴らしいと思います。このサイトが始まった数年後からフォロワーとしてできた数々のスタイル・ブログでもたくさん日本のファッション雑誌を載せていますね。

M:今はインターネットが発達して、トレードショーやファッションウィークの様子がどうであったかを瞬時に誰もが知ることが出来ます。だからこそブランドは世界中のどこからでも情報を得られてデザインのインスパイアをすることができます。

洗練されたアメリカン・プロダクト

A:それは世界各国の男性の着こなしにも個性が現れていますね。日本人男性の着こなしは、アメリカのいいところとヨーロッパのいいところを盛り込み、とても独創的でバランスが良いと聞きます。それは日本人の優れたリサーチ能力とセンスによるものかもしれませんね。逆にアメリカ人のファッション関係者はわりとシンプル。そこで自身の着こなしについて聞くとよく返って来るのが「Classic with a twist」という言葉。それは個性を加えたクラシックなスタイルと解釈できますが、実際にどういったものなんでしょうか?

M:私自身で言うと「クラシック」なアメリカン、アイビーが好きで普段はカジュアルだけど、スーツの時はイタリアのものが好きだし、それにオールデンの靴やブルックス・ブラザーズのボタンダウンシャツを合わせるような。それが俗にいう「ツイスト」の部分ですね。

おしゃれな東京ボーイたち

A:近年のアメリカンブランドの動向で面白く注目しているものは?

M:例えばパブリック・スクール(publicschoolnyc.com)のようなブランド。彼らは生地から全てをニューヨークのガーメントディストリクトで作りメイド・イン・ニューヨークとして出しています。それは革新的なことで、周りに大きな影響を与えていますね。あと、ニューバランスのような面白いことをし続けているブランド。毎シーズンスペシャルエディションが発表になって、私はいつも感心しています。

A:日本のブランドで好きなもの、注目しているものを教えて下さい。

M:Nanamicaやホワイトマウントニアリングのアウトドアコレクションは好き。ビーコン・ヘリテージ、エンジニアド・ガーメンツも。日本人が解釈したアメリカンブランドが特に好きです。日本のデニムブランドも尊敬に値します。無印良品も大好き。たとえ靴下だってクオリティの圧倒的な良さを実感しています。

A:ニューヨークのファッションシーンを形成しているのは何だと思いますか?

M:ニューヨークは様々な国の影響を受けたミックスド・カルチャーの街であり、他のどこにもない個性を発しています。新しいことをトライすることをいとわないし、それが変化に富んだエネルギーあふれる個性を作るのです。それとクールなものに溢れているということ。クールな店や人、場所があり、「クール」というアイデア、コンセプトは世界中のどこよりももっとも強いと感じます。日本もそうでクールな店は数限りなくありますね。

A:期間限定のポップアップイベントとして各地で行っている話題の「ポップ・アップ・フリー」がちょうど初めて東京で開催されました。実際にブランドの制作側と顧客を繋ぐとても興味深い場で年々大きくなっていますが、スタートのきっかけから現在の状況までを教えて下さい。

M:2009年6月、私とパートナーのランディは店をオープンしようと思い立ったものの実現できず、週末だけイベントとしてやろうと12人の友人に声をかけたのがきっかけです。たくさんの人やプレスが来て意外にも盛況だったので、次の秋もやってみようとなりました。そこから今まで毎年コンスタントに続けていて、前回のニューヨークでは1万6000人の来場者を記録しました。ブランドとお客さんが実際に互いの顔を見ることができ、より深く繋がる機会として、多くの人からの支持を得ました。全ての参加店ではありませんが、実際その多くがアメリカンブランド及び、そこにインスパイアされたものが多いです。

A:今後もアメリカと日本を含めたメンズファッションが面白くなりそうですね。

©Shinji Murakami

Aya Komboo
ニューヨーク在住のフリー・ジャーナリスト。日本で宝島社、トランスワールド・ジャパン等でファッション誌編集者として経験を積んだ後独立。マガンジンハウスや文芸春秋社など、さらなる媒体でのフリーランスを経て2006年に渡米。Free&Easyを始めとしたメンズ雑誌を中心とした数々のファッション誌で幅広く活躍中。ayakomboo.com

©Shinji Murakami

Michael Williams
メンズウェアブログ加熱の火付け役であるウェブサイトA Continuous LeanのファウンダーでPop Up Flea共同創始者。Red Wing、Levi’s、J.PRESSといった人気ブランドを抱えるマーケティング会社、Paul + WIlliamsの代表も務める。ポップ・アップ・フリーは新感覚のポップアップストア/フリーマーケットとして記録的来場者を集めている。paulandwilliams.com