自分の人生を投影させたメニュー作りを
日本、アメリカ、フランス、スペイン、ブラジル。これらの国はすべて、ロックフェラーセンター内に位置するレストラン「シー・グリル」で総料理長を務める藤永雄飛氏にゆかりのある国だ。日本で生まれ、1歳の頃よりハワイへ移住。料理の大学を卒業して、坂井宏行氏の「ラ・ロシェル」やアラン・デュカス氏の下でフランス料理の厳しさを叩き込まれた。シェフの世界では魚介の素材を活かすのに長けていると定評のあるスペイン料理を学びに、単身スペインで生活したこともある。ブラジルは、祖父母が住んでいた場所だ。小さい頃から美味しいものに囲まれて育ったんですよ、とほほ笑む。
さまざまなルーツや文化が交錯し、同じく美味しいものに囲まれることのできる街、ニューヨークに来たのは2002年のこと。マイペースな雰囲気だったハワイ生活から一転、競争の激しいニューヨークの有名店で厨房の下っ端として修業した。「そういった経験があったからこそ、今の自分や自信がある。自分が修業したこと、人生の背景や経験を、自分にしかできない料理へと活かしていきたい」と語る。
実際のところ、それは形になりつつある。日本人ならではの繊細な感覚で、だしや〝うま味〟を駆使した料理を洋風のシーフードレストランで提供している。伝統を守りつつ、シンプルなメニューで素材の良さを引き出す技は限りなく日本的だが、世界各国料理の要素を取り入れたコラボレーションを可能にしているのだ。
今日もシー・グリルのキッチンから、彼の個性というスパイスで味付けされた物語のような料理がゲストの元へ運ばれていく。
シェフのとっておき
「黒トリュフ」
今季は収穫がたくさんあり、質が高いのに安価で仕入れることができたという。これを機に、高級食材ということで尻込みしていた人にもぜひ楽しんでもらいたい、とのこと。和食と黒トリュフの組み合わせにも挑戦する予定だ。
取材協力:KORIN
取材:山田恵比寿
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