連載819  ロシアは必ず負けて衰退する! フィンランド冬戦争・継続戦争の教訓 (上)

連載819  ロシアは必ず負けて衰退する! フィンランド冬戦争・継続戦争の教訓 (上)

(この記事の初出は6月28日)

 最近、ウクライナ戦争が膠着状態に陥ったせいか、これまでの西側報道を否定し、ロシアの肩を持つ見方が広まっている。また、最後の1人まで戦うというウクライナの姿勢を批判する声も出てきた。
 しかし、歴史に学べば、ロシアの政治戦略と戦争のやり方は、帝政ロシア、ソ連を通してまったく変わっていない。歴史は、今後、ウクライナ戦争がどうなるか、そのなかでロシアがどんな行動に出るのかを教えてくれる。ロシアに正義があるはずがなく、いずれロシアは衰退していくと見るのが正解だ。
 今回から続けて3回、フィンランドがソ連と戦った「冬戦争」と「継続戦争」について、ウクライナ戦争のテキストとして詳述する。

 

これまでロシアは戦争に勝ったことがない

 東部戦線でロシア軍がウクライナ軍に攻勢をかけ、東部2州は制圧されつつある。そうなると、結局、ロシアの勝ちではないのかということで、日本でも「ゼレンスキー疲れ」「ウクライナ疲れ」が言われるようになってきた。
 先週、NATOのストルテンベルグ事務総長も、「われわれは戦争が何年も続く可能性に備える必要がある」と言い出した。
 しかし、私は、ロシアがウクライナ戦争に勝利することはけっしてないと考えている。今後、ロシアは確実に衰退し、ロシアの連邦国家としての崩壊もありえると思っている。
 なぜなら、今日までの状況を見ていると、ロシアという国は昔と少しも変わっていないからだ。帝政ロシア、ソ連といまのロシア連邦の政治戦略、戦争のやり方は、ほぼ同じだ。歴史をひもとけば、それがわかる。
 ただし、第一次大戦、第二次大戦などの大きな戦争ではなく、ロシアとヨーロッパの小国との限定戦争だ。
 とくに、ソ連がフィンランドを侵略した「冬戦争:Winter War」(第一次ソ連フィンランド戦争)とそれに続く「継続戦争:Continuation War」(第二次ソ連フィンランド戦争)は、いまのウクライナ戦争とそっくりである。ロシアという国は、近現代史においては戦争に勝ったことはない。第二次大戦でドイツに勝てたのは、アメリカが「武器貸与法」でソ連に大量の武器を送ったからだ。
 実際、ソ連は日露戦争では日本に負けているし、フィンランド冬戦争でも、わずかな領土を強奪できただけで、実質的に負けている。

 

冬のこの時期に攻めてくるわけがない

 フィンランド冬戦争は、1939年11月30日、ソ連陸軍がカレリア地峡の国境線を越えてフィンランド領内に侵攻、同時にソ連空軍がヘルシンキを突然空爆したことで始まった。
 フィンランドとソ連の間には、1932年に交わされた不可侵条約があった。したがって、フィンランドはいくらソ連から、領土割譲と交換の恫喝的要求を受けても、戦争にはならないと考えていた。しかし、ソ連は日本に対してもそうだったように、国際条約など平気で破るのだ。
 もちろん、フィンランドは、ソ連軍に対してある程度の備えはしていた。しかし、誰もがまさか冬のこの時期に、ソ連が軍を動かすとは考えていなかった。スターリンがそんな馬鹿げたことをするとは予想すらしていなかった。
 この点、西側が十分に警告し、侵攻があると指摘されたウクライナ戦争とは違っている。しかし、その侵攻が「偽旗作戦」によって行われたことは同じである。
 こうしてフィンランドにとって予期せぬこととして勃発した冬戦争は、約3カ月続き、翌1940年3月13日の停戦成立によって終結した。
 この間、圧倒的な軍事力の差があったにもかかわらず、フィンランド軍は戦い抜き、祖国の独立を守ったのである。


(つづく)

この続きは7月28日(木)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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