第57回 Gran Morsi

洗練されたカジュアルイタリアン

 イタリア語で「噛む(bites)」という意味の名前がつけられた同レストランが提供するのは、もちろんイタリアンだが、どれも洗練された盛りつけとシンプルかつ存在感のあるテイストの料理が特徴的で、ニューヨークのイタリアンレストランという印象。それもそのはず、同店のエグゼクティブシェフのケネス・ジョンソン氏は、アップタウンのイタリアンなどで、伝統を重んじながらクリエイティブな一皿をつくり上げてきた人だから。
 まずは、ニューヨーカーのサラダメニューとしてお馴染みのケールを使用した「ブラックケールサラダ(18ドル)」。ほどよい甘さの地元産のリンゴと歯ごたえのよいケール、スモークした鱒などをレモン・アンチョビ・ビネグレットソースを絡めて、召し上がれ。歯ごたえがいい新鮮な食材に安定感のある味付け、安心感のある一品。チーズ好きには「シープスミルク・リコッタ(12ドル)」、ヘーゼルナッツとネギ、オレンジの花から採取された蜂蜜とリコッタチーズの劇的な出会い―。これをブレットにのせて味わう、のどかな大自然が目の前に広がるような、ほのかな甘さと柔らかい食感が印象的。そして今回のメインに選んだのは、幅広いパスタのパッパルデッレを使用した「パッパルデッレ・ボロネーゼ」。ほうれん草を練り込んだパスタに、肉とトマトソースがしっかりと混ざり合い、食べごたえもあり満足度大。このほか、パルメザンチーズを使用したチキンやロブスター、石釜で焼いたピザ、その日のスペシャルメニュー(取材日は「鴨のスカロッピーネ」。オレンジピールが添えてあるため、鴨肉をさっぱりと食べられる)など、どれも伝統的なイタリアンメニューでありながら新しさを追求しており、シンプルな味付けと盛り付けはまさに“今”を感じさせてくれる。
 白い壁と木や煉瓦の茶色で統一された店内、壁から育っているかのような緑生い茂るアート作品や無駄のないデザインのインテリアなど、現代のニューヨーカーの価値観を体現しているかのように感じる。カジュアルだが、さりげなくエレガントなディナーデートを楽しみたい気分の時におすすめ。 Watanabe

手前はケールサラダ、左奥がリコッタチーズ、右奥はピザのようにカットされたブレッドにオリーブオイルとケチャプをお好みで

イタリアンといえば定番のボロネーズパスタ、間違いのない一品

Gran Morsi
22 Warren St (bet Church & Broadway St)
212-577-2725
www.granmorsi.com