連載843  放置される温暖化、気候変動リスク 東京もニューヨークも水没の可能性がある!(上)

連載843  放置される温暖化、気候変動リスク
東京もニューヨークも水没の可能性がある!(上)

(この記事の初出は7月26日)

 もはや、「記録的な」とか「観測史上初めて」とかいう言葉は聞き飽きた感がある。それほど、地球温暖化、気候変動は進んでいる。
 しかし、ウクライナ戦争で、世界的に温暖化対策は頓挫し、危機は深まっている。このままいくと、近い将来、東京もニューヨークも、海面上昇などにより水没の危険性すらある。しかし、政治の世界、経済の世界、そして投資の世界は、こうした温暖化リスクに真剣に取り組んでいない。
 ついこの前まで私は温暖化には懐疑的だったが、ここ数年、毎年のように猛暑を経験すると、危機感は深まる一方になった。

 

日本の空はバンコクなどと同じ熱帯の空

 先日、知人のANAの国際線パイロットから、こんな話を聞いた。
「いまの日本の夏の空は、東南アジアの熱帯の空と同じです。ホーチミンやバンコクの空港に着陸するときと、羽田や成田に着陸するときは同じになりました。突然、積乱雲が発生するので、それを回避するのに苦労します」
 パイロットにとって、積乱雲は大敵だという。それは、もし、そのなかに入ってしまうと、激しい揺れに見舞われ、場合によっては操縦不能になることもあるからだ。積乱雲は、その中心部に激しい上昇気流が、周囲には強い下降気流が発生しているので、近づくことは危険。そのため、パイロットは常に注意を払っているという。
「天気図や気象レーダーなどから、ある程度の予想は立てられます。しかし、熱帯の空は、突然変わるので、予想通りにはいきません。積乱雲に遭遇したときは、その距離や高さをすぐに察知しなければならないので、これにはキャリアがものを言います」
 日本の空はいまや熱帯の空。今年の猛暑を思えば、もはやこの言葉を素直に受け入れざるをえないだろう。地球温暖化は確実に進み、気候変動は止めようがなくなっている。

 

欧州全域を襲った記録的な熱波と山火事

 毎年のように、「記録的な」とか「観測史上初めて」という言葉を聞くようになった。もはや、この2語は聞き飽きた感がある。「台風の巨大化」「記録的短時間豪雨」「ゲリラ豪雨」「異常干ばつ」「猛暑」「熱波」「ヒートドーム」なども、繰り返し言われるようになり、私たちは実際にそれを体験するようになった。
 ここ数年、異常気象ニュースは、世界中で驚くほど増えた。とくに今年は多い。先週来、ヨーロッパの記録的な猛暑が報道されている。
 イギリスでは、熱波が続き、7月19日、ついに観測史上初めてとなる40度超えを記録した。フランス、ドイツは40度には達しなかったが、ドイツ西部の都市デュースブルクで39.3度を記録した。オランダでも南東部マーストリヒトで39.5度を記録した。
 スペイン、ポルトガルでは、熱波により大規模な山火事が発生し、森林を焼き尽くした。山火事は、大量の炭素を発生させる。
 EUの地球観測事業の一部を担っている「コペルニクス・モニタリング・サービス」によると、スペインで6~7月に山火事によって排出された炭素量は、同国で2003年以降の同時期に計測されたなかで最大量だという。
 イタリアでも山火事が多発し、ローマはすでに6月末時点で40度超えを記録した。

(つづく)

この続きは9月2日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 


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