第60回 Underwest Donuts

03/04/2015

ドーナツとコーヒーと車

プライスは１.50〜2.50ドル

　マンハッタン区のヘルズキッチンを抜け12番街まで歩いて行くと「CAR WASH」と書かれた大きな看板がある。それがアンダーウエスト・ドーナッツの入り口だ。「車の洗車場にドーナツ屋？」と思うかもしれないが、これはオーナーシェフのスコットさんの狙いだ。米国の日常で見受けられる〝洗車中にドーナツとコーヒーを楽しむ〟という伝統的なスタイルをニューヨークで提供したかったため、親戚が所有していた場所に長い間空いているスペースがあることを知り、昨年12月にオープンした。
　２月半ばに店を訪れると、ちょうど新商品のメープルワッフル・ドーナツを発売したばかりということもあり、新聞やテレビを見て、来た！と勢いよく店に入ってくるチャーミングなおじさん観光客たちやニューヨーカー、洗車に来た馴染み客で店内は混み合っていた。
　メープルシロップを染み込ませたグレイズドドーナツに、ベルギーのストロープワッフルを小さな帽子のように載せ、その上に砕いたピーカンとシロップをたらしたドーナツ。生地は柔らかく、ワッフルとナッツのサクッとした食感とのバランスを楽しみたい。これは旅好きのスコットさんが、モントリオールで味わったメープルシロップに感激し誕生したもの。また、世界中からインスピレーションを得ているといい、中東で閃いたのは「ハルヴァドーナツ」。中東のお菓子、ハルヴァを細く削りドーナツの上に散らしてあり、胡麻の風味と甘さが上品にマッチ。その他、ココナッツ好きがきっかけで、そこにライムを垂らして完成した「ココナッツライム・ドーナツ」など、どれも自分が好きなもの、旅先で出会ったものから作られており、いつもスケッチブックを片手にレシピを考えているという。
　朝食の時間に開店し、午後には売り切れも日常茶飯事だが、「もったいないから売り切れるように作りたい」ので、追加では作らないという。週末にかけて忙しくなるので、混んでいない平日が穴場だ。（Ｗ）