連載884 不動産バブル崩壊、食糧危機、習近平続投—- 中国が抱える「3大リスク」とは?(上)

連載884 不動産バブル崩壊、食糧危機、習近平続投—-
中国が抱える「3大リスク」とは?(上)

(この記事の初出は10月4日)

 中国はいま、「国慶節」の大型連休の真っ最中で、例年なら、人々は帰省をしたり、旅行をしたりして休暇を楽しむが、今年はまったく違っている。
 なぜなら、コロナ規制がいまだに続き、そのために経済は低迷したままだからだ。そこに、不動産バブルの崩壊、気候変動による大洪水と旱魃による食糧危機が重なり、さらに、10月16日からは習近平体制が3期目に入るのが確実な共産党大会がある。
 つまり、いまの中国は不安だらけだ。
 それなのに、中国がいまにも台湾併合をするようなことを日本の保守派、右派が煽って、防衛費増強を主張していることが私には信じられない。プーチンのロシアを見れば明らかなように、習近平・中国がそんな愚かな選択をするとは思えない。
 今回は、いま中国が直面する危機を見据え、今後の中国がどうなるのかを展望してみたい。

 

例年と違う「国慶節ウイーク」の北京

 中国では10月1日から、建国記念日に当たる「国慶節」の大型連休が始まっている。しかし、今年の国慶節ウイークの北京は、例年とは違っている。
 それは、政府がいまだにコロナ規制を続けていること。それにより経済が低迷したままになっていること。さらに、10月16日からは、節目の第20回共産党大会があることなどで、人々の動きがほとんどないからだ。
 実際、この時期、地方から北京にやってくる「お上りさん」は多いが、今年も昨年同様少ない。北京在住の私の知人は、こう語る。「北京駅は混雑していませんね。政府はいまだに省をまたぐ移動の自粛を呼びかけています。飛行機も高速鉄道も、48時間以内のPCR検査の陰性証明を提示しないと乗れません。だから、行楽といっても市内ですますのです。お上りさんは、いるにはいますが本当に少ない」
 北京市内では、各所に第20回共産党大会の記念看板が建てられているが、人々は気にも止めていないという。「すでに習近平が続投して3期目に入るのが既定路線ですから。関心は、取り巻きの人事がどうなるか、それで経済がどうなるかだけです」


なぜ中国は「ゼロコロナ政策」を続けるのか?

 いまやGDPで世界の経済規模の18%まで占めるようになった中国。その動向次第で、世界は大きな影響を受ける。とくに、日本は中国依存が強いのので、その影響ははかり知れない。
 それにしても、今日まで中国リスクが叫ばれ続けてきたというのに、なぜ、日本企業はいまだに脱中国ができないのだろうか?
 経済的利益を考えればそれは仕方ないとしても、私が信じられないのは、中国がいまだに「ゼロコロナ政策」を続けていることだ。これをやられては、どんな企業も利益を生み出せない。「ゼロコロナ政策」は、ここ3年弱でわかったように、経済自滅策である。
 しかし、習近平は頑なにロックダウンを止めない。世界の首都で、人々がマスクを着けて歩いているのは、北京と東京ぐらいである。異常も異常だ。
 一部に、「ゼロコロナ政策」は、習近平が今度の共産党大会で成果を強調するためで、党大会後は緩和されるという見方がある。しかし、もう一つの見方は、ゼロコロナ規制によって国民すべてのデータ管理を可能にし、権力を盤石にするというもの。後者のほうが、説得力がある。
 いずれにせよ習近平は、1度はグローバル経済に組み込まれた中国を世界経済から切り離し、毛沢東時代に回帰しようとしている。そうして、中国をアメリカを超える覇権国家にしようとしている。


(つづく)

この続きは11月4日(金)発行の本紙(メルマガ・アプリ・ウェブサイト)に掲載します。 

※本コラムは山田順の同名メールマガジンから本人の了承を得て転載しています。

山田順
ジャーナリスト・作家
1952年、神奈川県横浜市生まれ。
立教大学文学部卒業後、1976年光文社入社。「女性自身」編集部、「カッパブックス」編集部を経て、2002年「光文社ペーパーバックス」を創刊し編集長を務める。2010年からフリーランス。現在、作家、ジャーナリストとして取材・執筆活動をしながら、紙書籍と電子書籍の双方をプロデュース中。主な著書に「TBSザ・検証」(1996)、「出版大崩壊」(2011)、「資産フライト」(2011)、「中国の夢は100年たっても実現しない」(2014)、「円安亡国」(2015)など。近著に「米中冷戦 中国必敗の結末」(2019)。

 

 

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