2011年3月11日に起きた東日本大震災が原因で発生した原発事故のため、「フクシマ」は世界中の人々に知られることとなった。ジャパン・ソサエティーでは20日、福島の現在の状況を一人でも多くの人々と共有すべく、南相馬市を舞台にしたドキュメンタリー映画『ASAHIZA 人間は、どこへ行く』の上映に加え、福島県病院事業管理者、相馬広域こころのケアセンターなごみ理事会メンバー、福島県立医科大学名誉教授・丹羽真一氏と、福島で多岐にわたる活動を行い、ASAHIZAの音楽を担当した音楽家の大友良英氏による対談を開催した。大友氏は福島の現在と未来を世界に発信するために結成された「プロジェクトFUKUSHIMA ! 」の発起人の一人であり、フェスティバルを開催するなどの支援活動もしている。
『ASAHIZA』は、福島第一原発から約24キロのところにある南相馬市の劇場朝日座とその周りの住人達に焦点を当てたドキュメンタリー。朝日座は、長きにわたり地元コミュニティの中心的な文化施設としてイベントや映画上映を行っていたが、原発事故の影響で地元の様相は大きく変容した。プロデューサーの立木祥一郎氏は「この映画は、地震や原発事故についての映画ではありません。朝日座という劇場をめぐる人々の記憶をたどるドキュメンタリーです」と述べている。今回の映画上映に対し大友氏は「ニューヨークでこの映画を上映できることを嬉しく思います」と述べた。
上映後は、丹羽氏と大友氏がそれぞれの視点から心のケアの問題や現況について語った。丹羽氏は、こころのケアセンターなごみが、福島県相双地区でこころのケアと福祉の向上を推進していることなどを伝えた。観客からは今回の催しに対し「映画上映、福島の現状を聞ける機会をつくってくれたことに感謝する」との声も聞かれた。