Vol.37 俳優 尾崎英二郎さん

 俳優・尾崎英二郎さんの最新出演映画『Little Boy(原題)』が、4月24日に全米1045館で封切られた。初日には興行収入135万5000ドル(約1億6000万円)を記録し、初登場第8位にランクイン。
 同映画で主人公リトルボーイに勇気と希望を与える小柄な侍を演じ、また昨年8月に自叙伝「思いを現実にする力」を発売し、後輩たちへの激励にも力を注いでいる尾崎さんにインタビューを行った。

 

<プロフィール>
尾崎英二郎。1969年、神奈川県出身。代表作:映画『硫黄島からの手紙』『ラストサムライ』ほか。TV『HEROES/ヒーローズ』『TOUCH/タッチ』ほか。www.eijiroozaki.net/jp/

 

―まずは、どのような点に引かれて『Little Boy』に出演したいと思ったのでしょうか?

 オーディションで受けた役柄(マサオ・クメ役)に描かれていた心情が、自分が普段から感じている気持ち、そのものだったからです。人々に勇気を与える、素晴らしい役でした。
 そして、とにかく脚本が美しかったです。アメリカ人の少年が主人公ですが、日系アメリカ人や日本人の威厳、文化、考え方もバランスよく捉えています。差別や戦争による痛みも伝えている秀作なので、絶対に参加したいと思えるものでした。
 キャスティングのトップの担当者が、僕が強く影響を受けた『ブラック・レイン』を手がけた人だったことも大きいです。

―他の出演者との共演はいかがでしたか?

 僕の登場場面は、日本人出演者たちとの共演だったので、そういうシーンが映画の中にあることが誇らしかったです。全員が全力を注ぎ込んだ、物語上もっとも大切な場面です。

―本作の中で学んだことは何ですか?

 僕のシーンには、アクションが含まれています。スタントをコーディネートしてくれた方々(2人)が、1人は『アバター』『トランスフォーマー』『ゴジラ』を、もう1人は『キック・アス』『パシフィック・リム』『ラッシュアワー3』を手がけた一流スタッフでしたから、彼らから指導される時間のすべてが学びでした。一瞬たりとも手を抜かない、そういう初心のような思いに立ち返ることができたと思います。
 そして、「全力で役を生きる」という尊さを学びました。誰のために闘うのか、心の中にしっかりその思いがあれば、必ず目に、表情に、呼吸に、動きに、すべて映し出されるということです。

―役作りで苦労した点、チャレンジとなった点は何ですか?

 僕の役柄は、もともと脚本には〝15才〟の設定で書かれていたんです。当初はティーンエイジャーを雇うつもりだったそうですが、オーディションでの僕の演技を見た監督が「役の設定を書き換えるよ!」と言って抜擢してくれたので、表情から若いエネルギーをあふれさせることを心掛けました。 
 思いきって起用してくれた監督や脚本家の期待に応える演技を見せること、一流のスタントコーディネーターたちをがっかりさせない迫力を生み出すことが、とにかく唯一のチャレンジでした。

―撮影現場での印象に残っているエピソードはありますか?

 映画の撮影の最終日が僕のシーンで、クランクアップの瞬間、プロデューサーが集まっていた関係者に向けて改めて僕の名前と役名を呼び上げて讃えてくれたんです。その思いが嬉しくて、涙が流れました。

―映画の見どころを教えて下さい。

 主人公の少年を演じたジェイコブくんの演技と、彼の役柄の成長。
 それから、かつてのアメリカ映画では描かれたことのないような、戦争を描く切り口です。

―昨年出版した著書「思いを現実にする力」について、執筆のきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

 〝無名〟からスタートした自分が挑んできた道のりを語ることで、「自分にもできるのでは?」「何度失敗しても、学べば上がっていける!」と、多くの人に伝えたかったからです。

―書籍を通して、伝えたいことは何ですか?

 目の前の、甘くて楽な条件に飛びつくのではなく、辛くて厳しくとも長い先の目標地点を目指し、地道な作戦を丁寧に考え、練ることです。 
 願望だけでも、努力だけでも、足りない。誰のために、いつどのタイミングで、どの場所で、自分という商品を最大限にアピールするか? 考え抜くことが大切だと思います。僕は、20年先の未来の自分の立ち位置を思い描きながら、この本を書きました。 世間をびっくりさせるような大きな手柄より、自分自身が納得できるような細かな勝利体験を懸命に重ねることです。

「思いを現実にする力」

―外国の作品に出演したいと思うのはなぜですか?

 より多くの人々を、自分の演技や作品で楽しませたいからです。世界市場で受け入れられる作品を目指せば、その可能性が増します。現在、僕は活動拠点がロサンゼルスですから、〝海外〟 の作品という意識はあまりありません。むしろこの国の業界や国内(米国)市場にどれだけ浸透できるかが、当面のチャレンジです。 
 世界中の人々に、〝ステレオタイプではない日本人像〟を伝えたい、という思いもあります。自分が培った目線で演じて、納得できる人物像を生み出していきたいです。 素晴らしいのは、現場にいる人々が心から仕事を楽しみ、誇りを抱いていることですね。お互いに敬意があり、上下の階級差があまりない国では、怒鳴り声を聞くこともまずありません。笑顔も絶えない。そこがいいです。特にハリウッドは、皆穏やかな雰囲気で撮影していますね。

―気分転換したい時にはどのようなことをされていますか?

 バルコニーに飛んでくるハチドリを眺めながら、お茶を飲みます。読書も好きです(自分の血肉にしたいと感じた、元気の出る本を何度も何度も読みます)。

―ファンが喜ぶような活動の予定は?

 日本に帰国した際に講演をさせていただくことが多いのですが、ニューヨークでも映画の舞台裏を語るトークイベントなどをしてみたいですね! 間もなく、講演のDVDが日本で初めて発売されるんです。

―今後の目標などあれば教えてください。

 書籍に書いたことが嘘にならない自分になっていくことです。さらなるステージへ挑んで、さらに多くの人々に勇気を与えられるような人間になることです。

―最後に、ニューヨークで暮らすファンの方々にメッセージをお願いします。

 是非、映画『LITTLE BOY』を劇場スクリーンで楽しんで下さい!! ニューヨークは、1998〜99年に舞台を演じ、2009年に短編映画を撮影した想い出の土地なので、また仕事で訪れることが一つの目標です。活動をどうか見守っていて下さい。


映画『Little Boy』全米公開中
 少年リトルボーイの目を通して反戦と差別を描く感動作。監督、アレハンドロ・モンテヴェルデ、出演はマイケル・ラパポート、ジェイコブ・サルヴァティ、ケイリー・ヒロユキ・タガワ他。www.littleboymovie.com