遺言書の執行者になったら
日本でも遺言書を作成する人が段々増えているようです。また、私のオフィスでも最近、遺言書に関するお問い合わせが増えてきました。遺言書を作成する時は、必ず執行者(Executor)を指名する必要があります。執行者は18歳以上の米国市民(あるいはグリーンカード保持者)で重罪歴が無ければ、血縁関係に関わらず誰でも指名できます。
今回は、ニューヨークでの遺言執行者の任務についてご説明します。なお、遺言書が無い場合の遺産管理人(Administrator)も遺産分配を除いて、同様の作業をします。
1.故人の遺産のリストを作成し、各機関に通知する
故人の遺産の詳細が分かっている場合は簡単ですが、もし分からない場合は故人の郵便物や記録を見る必要があります。まったく見当がつかない場合は、裁判所の認定書があれば、金融機関では口座の有無を教えてくれます(ただし一行ずつ確認要)。また、生命保険の有無、勤務先で401Kなどのプランに加入していたかなど、考えられることすべてをリストし、各関係機関に連絡します。なお、生命保険や401Kなど、受取人が既に登録されているものは、受取人が直接手続きできます。
2.裁判所での手続き
1と同時に裁判所(Surrogate’s Court)で遺言書の手続きを行います。遺言執行者は裁判所から正式に任命される必要があります。
3.遺産の売却
必要であれば、不動産や価値のある物(宝石など)は売却して現金化します。
4.遺産口座(Estate Account)の開設
故人の銀行口座は一旦閉め、遺産口座を開設します。開設には裁判所からの遺言執行者の任命書と遺産の納税番号が必要です。故人の遺産はこちらに移されます。
5.負債の支払
故人に負債があった場合は、その支払いをします。負債には支払うべき順番があり、葬儀代や弁護士費用、税金など、優先順位が高いものが先に支払われます。十分な遺産が無くても、日本のように負債が家族に引き継がれることは通常ありません(詳細はご確認ください)。
6.税金の支払い
相続税だけでなく、故人の税金の申告をする必要がある場合は、そちらも遺言執行者が行います。負債や税金の支払いが終わるまでは、遺産の分配はできません。
7.遺産目録の提出と遺産の分配
遺言執行者が認定されてから一定期間内に、遺産のリストを裁判所に提出します。また、すべての作業が終了したら、遺産を遺言書に従って受取人に分配します。
☆記載事項の詳細については、管轄のSurrogate’s Courtあるいは弁護士にお尋ねください。
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飯島真由美 弁護士事務所
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NY州認定弁護士。法政大学文学部、NY市立大学ロースクール卒業。みずほ銀行コンプライアンス部門を経て独立。2010年に飯島真由美弁護士事務所を設立。家庭法、訴訟法、移民法など幅広い分野で活躍中。趣味はカフェ巡り。