聴覚に障害のある男性が2013年に自宅で死亡したのは、処置を行った病院側が必要な手話通訳者を手配しなかったためであるとして、男性の遺族がニューヨーク市の医療システムを提訴したことが分かった。
マンハッタン連邦裁判所に提出された訴状によると、同年11月5日にカテーテルを挿入した状態で自宅で死亡したアンドレ・ベリーさん(52)の遺族は、ジェイコブ病院とリンカーン病院の2つの病院を管理する同市のヘルス・アンド・ホスピタルズ・コーポレーションを相手取り訴えを起こしたという。
乳児のころに感染症で聴覚を失ったベリーさんは、08年にHIV陽性と診断され、さらに糖尿病と腎臓病も患い透析が必要な状態となった。13年10月になり、リンカーン病院の透析予約に数回現れず、その後来院した際には症状が悪化していた。
さらに3週間後、地下鉄内で胸痛を訴え倒れたとしてジェイコブ病院へ搬送されたときには、妹のデニスさんが病院へ電話し手話通訳者を手配するよう伝えたにもかかわらず、通訳者不在の状態で2回の手術を受けた。
訴状では、ベリーさんは29日帰宅したが「本人は病状について理解できておらず、病院と会話が不可能なまま死亡した」としている。
デニスさんは「何度も兄に付き添い病院へ行き、通訳者を手配するよう依頼したが一度も手配されることはなかった」と話している。