ニューヨーク最大の音楽フェス、ガバナーズボール・ミュージック・フェスティバルがランダルズ・アイランドで6月5~7日の3日間にわたり行われました。初日はお天気雨に悩まされたものの、残り2日は陽射しが容赦なく照りつけ、真っ赤に干上がったパーティーピープルの姿がチラホラ。60ものアクトのうち、実際に見たなかでも特にツボに響いたステージの私的なレビューをお届けします。
初日のベストはイギリスのバンド、フローレンス・アンド・ザ・マシーン。ファッションアイコンとの呼び声も高いフローレンス・ウェルチのフォーキーかつヒッピーなスタイルを真似たような女の子が会場でも目につきます。幻想的な曲に合わせ微動だにせず魔女のようなアクトをするかと思いきや、ステージの端から客席まで所狭しと走り回り、伸びのよい声でパワフルに唱い上げる様はまさに女王の貫禄で、オーディエンスをまるごと底アゲ。そして昨年ラフトレードからデビューした新人ベンジャミン・ブッカーは、パンクやガレージロックに影響を受けたギターが唸るサウンドを、しゃがれまくった声でソウルフルに熱唱。その疾走感あふれる荒削りな演奏とヴィンテージ調の世界観で会場をロックしていました。
2日目の目玉は何と言ってもビョーク。新作『Vulnicura』を引っさげたステージは、グロテスクな昆虫がうごめく映像が大画面に現れ、気持ち悪い感じでスタート。マスクをかぶり、羽根の生えた緑と紫のきらびやかな装飾の真っ黒な衣装で、まさに毒グモになったようなビョークが登場。生物の鈍い動きと鼓動のような重低音のビート、『Army of Me』が流れれば、その怪しさは全開。神秘的な歌声とアバンギャルドな世界観は照りつけるお日様の下にはやや不似合いでしたが、まさにビョークらしいステージ。オーケストラを引き連れながらも、ラップトップのパーカッションやビートメーカーにデジタル画像と新旧音楽の共演、型にはまらないステージングにただ魅了されます。トリのライアン・アダムスは心に染み入るギターロックをバラエティ豊かに奏でるも、途中、昨今のデジタル音源での曲作りの流れを「ロボット・ミュージック」と批判したトークが、同時に別ステージで行われていたDJデッドマウスへの批判として話題になり、後日ネットで炎上する騒ぎにも発展しました。
3日目はロックに浸った一日。ラウドなロックを堂々と聴かせてくれたロイヤル・ブラッド、ノエル・ギャラガーは『Champagne Suernova』を始めとするオアシスからのクラシックナンバーもプレイ、そこで観客が一斉にシンガロングし会場はまさにひとつに。この2バンドは7月末のフジロック出演も決定し、日本のファンの期待も高まるところ。ラナ・デル・レイと同時にトリを飾ったのは、現在までにグラミー7冠を遂げているオハイオ発のザ・ブラック・キーズ。レトロ感漂う痛快ロックサウンドを引っさげストレートにかっこいいパフォーマンスで潔く幕を閉じます。
そして「It Was All A Dream(これは全て夢だった)」と切ないメッセージが大きく書かれた門をくぐり会場を後にします。三十路の体にムチ打ちながらはしゃいだ3日間も夢だったのかしらと思いながらも、ほっこりしながら帰路に着きました。
フリー・ジャーナリスト
Aya Komboo
www.ayakomboo.com
日本では数々の出版社で経験を積み、フリーランスへ転身。2006年よりロサンゼルスへ渡米し、現在はニューヨークを拠点にファッション/カルチャー誌などで活躍している。