浅沼(Jay)秀二シェフ 世界の食との小さな出逢い 第2回今日も朝からカオマンカイ

今日も朝からカオマンカイ

イラスト浅沼秀二

 タイを旅したときの話。以前、友人にアジアの中で旅行に行くならどの国がお勧めか訊かれたことがある。うーん…これは難しい質問だ。もちろんベトナムも、インドもラオスも素晴らしい。ただ初めて行くならやはりタイだろう。理由はなんといっても食べ物のバラエティーが多く、そして旨いこと。道端で売られている屋台料理から果物、レストランの料理までどれもレベルが高い。毎日何を食べようか、ワクワクすること間違いなしだ。
 ぼくがそのアジアきっての美食の国タイを旅したのは夏だった。
 夏のタイは暑い。バンコクの街の至る所で売られているビニール袋入りのジュースが、ここでは砂漠のオアシスになる。道行く人たちはこのオアシスでのどの渇きを癒す。それでも、さすがに真昼の炎天下はキツイ。なのでバンコク滞在中は陽の高い時間を宿でのんびりすることにして、朝早くに食巡りをする作戦にでた。そしていろいろと「朝ごはん」を巡った。その中でも特に旨かったのがヤワラートの中華街で出会った「カオマンカイ」。これはご飯に鶏肉の茹でたものを載せただけの簡単な料理。中華街でよく見かけるというのだから、もともと中華料理なのだろうか。タイでは次のようなスタイルで出てくる。
・茹でた鶏肉がご飯の上に乗せてある。
・鳥の脂を使って米を炊いている。
・きゅうりの輪切りが添えてある。
・冬瓜のスープが付いている。
・シラントロ(パクチー)が載っている。
・自家製のタレが添えてある。
つまり、カオ(米)、マン(脂)、カイ(鶏肉)というわけだ。
 カオマンカイはいたってシンプル。でもこのシンプルさが実にいい感じにまとまっている。そして何より強烈に旨い! どの店も自家製のタレが付いていてるのだが、残念ながらどこも秘密のようだ。それぞれ独自のレシピらしい。でも和風にアレンジすれば、家庭でも簡単にできそう。鶏のモモ肉に酒をふりかけ、火が通るまで10分ほど蒸す。食べる時にたっぷりのおろし生姜とシラントロのみじん切りを添えた醤油をつける。ごま油をちょっと垂らしてもいい。そしてご飯と一緒にワシワシと食べる。これだけでもかなり旨い。
 ただし、タイの香辛料は独特。あの風味を彼の地以外で出すのはなかなか難しいかもしれない。なので、ぜひ本場のカオマンカイも試してほしい。うーん、そうなるとやはりアジアのお勧めはタイだ。タイへ行って朝からカオマンカイだ!


浅沼(Jay)秀二
シェフ、ホリスティック・ヘルス・コーチ。蕎麦、フレンチ、懐石、インド料理などの経験を活かし、「食と健康の未来」を追求しながら、「食と人との繋がり」を探し求める。オーガニック納豆、麹食品など健康食品も取り扱っている。セミナー、講演の依頼も受け付け中。
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